エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.451
2015.11.06 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
近頃では各パーツを自らチョイスするDIY水冷のハードルもずいぶんと下がった印象がある。単なる自作PCに留まらないDIY水冷はパーツ選定の楽しさに加え、クーラントのカラーや発光アイテムを取り入れるなど「美しく見せる」ことを目的とした楽しみ方も魅力だ。
さて、PCケース選びの選択肢に「RAVEN」シリーズを候補に挙げる自作派なら、水冷ユニットとのマッチングは気になるところだろう。とはいえ、内部容積に限りがあるだけあってDIY水冷は得意としていない。そこで今回は最もポピュラーなオールインワン水冷ユニットを用意し、搭載を試みた。搭載テストには120mmサイズラジエターを備えたオールインワン水冷ユニット、SilverStone「SST-TD03-LITE」を用意。ラジエターはトップ部にマウントし、120mm口径冷却ファンは外排気方向に搭載している。
120mmサイズラジエターのSilverStone「SST-TD03-LITE」をマウント。電源ユニットが隣接するため、120mmサイズラジエターのウォーターチューブは、左方向になるように固定する必要がある | |
CPUソケットとトップ部のラジエター搭載スペース間はさほど距離がなく、ウォーターチューブにストレスが掛からずに固定ができた |
マザーボード90°回転レイアウトならではの注意事項として、「ケーブルの居住制限」について解説しておこう。特異な内部設計により、モニタケーブルや入力デバイスの各ケーブル、電源ケーブルは背面ではなく、トップ面に接続する事になる。その多くは各ポートへ垂直にコネクタを挿し込む事になるワケだが、トップパネルとの隙間は60mmとされ、この空間に収まるコネクタを使う必要がある。左右をネジで固定するDVIやD-Subはともかく、アシストのないHDMIやDisplayPortは、ケーブルの曲げ方によりコネクタから外れてしまう恐れがある。特に取り回しの悪い太いケーブルは、できる限りストレスのない状態にする配慮が必要だ。
トップカバーのみハンドスクリューが使用されている理由は、ケーブル類の抜き差し頻度への配慮。バックパネルI/OのUSBポートを使用する際、都度トップカバーを外さなければならない面倒と引き換えに、接続部が露出しないスッキリとした外観も「RVX01」の魅力でもある |
最後にCPUクーラーメンテナンスホールをチェックしておく。搭載テストにはASRock「Fatal1ty H170 Performance」を使用したが、LGA1151のCPUソケットにバックプレートを使ったところで、周囲にはまだスペースに余裕がある。文字通りCPUクーラーのメンテナンスや換装など、マザーボードを外すことなく、容易に作業ができる。
CPUクーラーメンテナンスホールのカットサイズは、実測で縦約145mm、横約140mm |
「RAVEN」シリーズといえば比較的高価な部類のPCケースとして、市場に認知されてきたミドルタワーPCケース。一転、「RVX01」では1万円台前半のエントリークラスとして投入され、これまでの座標軸を大きく変えたSilverStoneのチャレンジ的モデルとも解釈できる。その出来映えによっては、積み重ねてきた「RAVEN」シリーズのブランドイメージが変わる可能性を秘めている。ここは慎重にジャッジすべきだろう。
まず、既製の共通シャーシを使い価格を抑えたモデルではない点は、評価しなければならない。価格を抑えつつ、マザーボードの90°回転レイアウトを軸に、3連「徹甲弾ファン」による「正圧設計」と「煙突効果」は、エントリークラスとはいえ、しっかりと再現されている。「RAVEN」シリーズのキモとなるポイントに妥協はなかった。
見た目の押し出しは、売価2万円台クラスの風格。歴代「RAVEN」が積み重ねてきたブランドイメージは自作市場に深く根付いている |
一方で特異な内部設計とはいえ、廉価版なりのクオリティを感じさせる部分は見受けられる。ボディ自体は見た目以上に軽量で、特に拡張スロットの”切り抜き”部分は、最エントリークラスのPCケースと変わらない軟弱さを感じさせる。とはいえ、グラフィックスカードを一度固定してしまえば、固定面の強度が増し、それほど気にならないだろう。
外観のプラスチック部分の成形は歴代デザインを踏襲。内部構造共に紛れもなく「RAVEN」であり、今まで手が出せなかったターゲット層に贈るSilverStoneの計らいは、素直に賞賛すべきだろう。