エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.498
2016.07.19 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕 / 池西 樹
続いてファンの回転数を計測していこう。測定条件は「CPUコア温度の計測」と同様、数値の取得には「HWMonitor 1.29」の「CPUFANIN」を使用した。
冷却ファン回転数(室内温度24.8℃) |
アイドル時でも消費電力が若干増えている4.10GHzでは回転数は約40rpm増加。それでも800rpm台で推移しており、低い回転数で安定している。また高負荷時でも定格駆動では公称最高値(1,800rpm)の約6割となる1,150rpm前後までしか上がらず、まだまだ余力がある。一方4.10GHz駆動では1,650rpm前後で推移。要所では公称最高値となる1,800rpmまで上昇し、冷却性能はほぼ上限に達している印象だ。
次にテスト中のファンの騒音値をチェックしておこう。計測はファンから30cmの距離にデジタル騒音計を設置して行っている。
騒音値(暗騒音33.1dBA) |
回転数が800rpm台で推移するアイドル時はいずれも34dBA台で静音性は良好。高負荷時でも定格駆動では38.4dBAまでしか上がらず、バラック状態のテストながらファンのノイズが気になることはなかった。また回転数が大幅に上がる4.10GHzでは41.2dBAまで数値が上昇。さすがに静音の域からは抜け出しているが、このクラスのCPUをオーバークロックするのに静音性を求めるのは少々ナンセンス。十分冷却できている点を褒めるべきだろう。
iOS端末に接続するサーモグラフィ「FLIR ONE」と、非接触型デジタル温度計による温度分布を確認していこう。なお「MasterAir Maker 8」ではヒートシンクの露出が少ないため、非接触型デジタル温度計による計測はサイドのみ。なおこちらは4.10GHz駆動時の高負荷状態30分経過後の状態を測定している。
「FLIR ONE」による測定結果。ヒートシンク部はまんべんなく温度が上昇している | |
高負荷状態30分経過時のポイント別温度計測結果 |
ベースプレートが最も温度が高く、CPUから距離が離れるに連れて低くなる予想通りの結果。またサーモグラフィを見ると分かる通りヒートシンク部はほぼ全体が赤くなっており、3Dベイパーチャンバーとヒートパイプを使い、CPUの熱をうまくヒートシンクに分散できている様子が見て取れる。
新技術「3Dベイパーチャンバー」を掲げて市場に投入された「MasterAir Masker 8」。Cooler Masterの威信に賭けた新作は、高い冷却能力を実証。気軽に手が出せる価格ではないものの、十分に説得力のある検証結果が出ている。
「MasterAir Maker 8」は、CPUから熱を吸い上げ、アルミニウム製放熱フィンへ素早く熱を移動させる、空冷では最もキモとなる部分に注力。従来型ヒートパイプと一体成型した「3Dベイパーチャンバー」により仕事量の向上が徹底されている。水冷のように一見して派手な要素はないが、空冷を極め続ける老舗の威信に賭け、明らかに従来型とは違うCPUクーラーを完成させた。
最後にやはりネックとなる価格だが、ベイパーチャンバーのコストはCooler Master特有の悩みではなく、現状では「効果の対価」として受け入れる必要がある。あれこれ悩まず、高い冷却能力をもった空冷CPUクーラーを必要とするならば、「MasterAir Maker 8」は損は無い。魅せるPCの要素も兼ね備えた、現時点で最強クラスのCPUクーラーである事は間違い無い。