エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.515
2016.09.20 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
従来の左サイドパネルを正面に見据える「DG-87」は、魅せるPCケースが主要コンセプトである事は疑う余地が無い。十分過ぎる内部容積と、広大な開口部のアクリル窓は、DIY水冷を構築するベースとして最適なモデルと言えるだろう。このセッションでは、水冷パーツのマウントに最適化された、リザーバータンク設置エリアと、2箇所のラジエター搭載エリアをチェックしてみよう。
まず右側面寄りの広い空きスペースに注目して欲しい。ちょうどEVGAのロゴ入りアクリルパネルの裏側に位置するこの部分には、ハンドスクリュー1個でブラケットが固定されている。ここはリザーバータンクの設置スペースで、3つの溝と穴はクランプをネジ留めするためのもの。ロングタイプのリザーバータンクをはじめ、ポンプ一体型リザーバーも設置できるだけのスペースが確保されている。
取り外し可能なブラケットには3つの溝があり、リザーバータンク固定用クランプが搭載可能。穴には溝が設けられ、ナット不要でネジ留めできる | |
搭載テストには、ポンプ一体型リザーバーThermaltake「Pacific PR22-D5」を使用。高さは309.7mmだが、上下にはまだ十分な空きスペースがある |
次に120mm口径ファン3基を並べた、360mmサイズラジエターを、トップにマウントしてみよう。トップパネルからマザーボードまでは実測で約60mm。ここに厚さ35.5mmの「XSPC EX360 Single Fan Radiator」、120mm口径25mm厚の冷却ファンをマウントしてみた。
厚さ合計60.5mmと、空きスペースの60mmは超えているものの、PCケース幅があるため、ラジエター+冷却ファンとマザーボードが干渉する事はなかった。
ABS樹脂製トップ外装パネルを外したシャーシ面には、120mmと140mm両ピッチ対応のスリットが設けられている。単なる丸穴とは違い、約50mmの前後ストロークにより、搭載位置の調節ができる |
次に右側面パネルに同じく360mmサイズラジエターを搭載してみよう。ここには140mm口径ファン3基が標準で装備されており、まずはそれらを取り外す必要がある。広大な内部容積ながら最下段はドライバーが入りにくいため、床面に固定されたHDDケージは一度外しておいた方がいいだろう。ラジエターの固定自体はトップ同様、50mmストロークのスリットにネジ留めするだけ。
従来のフロントを右サイドパネルに見立てるため、冷却ファンを敢えて外排気でマウント。防塵フィルタを通り、外部へ熱を排出させるレイアウトにしている |
グラフィックスカードやマザーボード、さらに電源ユニットのメーカーというイメージが強いEVGAがリリースした「DG-87」は、恐らく日本国内で販売される可能性は低い。ではなぜ検証の素材に選んだのか。それは十分に魅力的な製品に感じたからだ。
日本市場とEVGAは、相性があまり良くない。ご存じのように、長い自作PCの歴史にあって、日本市場になかなか根付かなかった。これにはメーカーの思惑と、日本の特殊な商習慣がマッチしないこと、さらにEVGAがアメリカのマーケットを中心に据えている点もその要因になっている。直販でやりくりしようという意欲も強く、現時点明るい兆しは見えない。
とは言え、国内未発売でも構わず良いと思うアイテムを取り上げる事で、熱心な自作派達の声がメーカーに届くかもしれない。消極的だった国内の流通経路が活発になる可能性もある。とかくPCケースのような大型商材は送料がネックになるため、PCパーツの卸業者に任せる方がいいだろう。いわゆるワンショットでも構わない。「DG-87」が店頭に並ぶ日を信じて心待ちにしたい。