• Mitch氏
  「オールインワン水冷ユニットは安全なんだ」と、ユーザーに認知されたのが大きいと思います。私が高校生の時の話ですが、PCのクラブに所属していました。ある日、顧問の先生が組んだDIY水冷PCを皆に見せようと電源を入れた瞬間、クーラント液が噴き出してデスクが水浸し。当然いくつかのPCパーツもダメになったのを目の当たりにしたんです。今となっては笑い話ですが、個人的に水冷は怖いなというイメージがあったんですよ。そんな私も、CORSAIR製の水冷ユニットを手にして考えが変わった一人でした。
• Jeff氏
  さらに当時はまだCPUの発熱が課題でした。効率的な冷却ができ、さらに安全というオールインワン水冷ユニットの成功は時代の流れに乗ったと言えるでしょう。

Jeff Cheng氏（APAC営業担当）。台北を拠点にFoxconnやPegatron、ASUSといった大手メーカーを担当している。以前は北米最大のBTOベンダーである「iBUYPOWER」で開発やマーケティングを担当

今後はGPUの水冷化にも注力していく

• 編集部
  多数のメーカーに提供していますが、製品化にあたりどのように話が進んでいくのでしょうか。
• Mitch氏
  オールインワン水冷ユニットを提供し始めた当初は、Asetekからプランを提示していました。ラジエターのサイズやチューブ、水冷ヘッドの組み合わせなどです。しかしここ数年は各製品の差別化が進み、各メーカーの担当者から独自のプランを提示される事がほとんどです。
• 編集部
  例えばLEDを付けてくれとかチューブは柔らかくしてくれといった事ですか？
• Mitch氏
  はい、まずは要望を聞き、それに沿った製品のアイデアをAsetekで考えます。その後、こちらから製品プランを提示。細かい点のアレンジは任されることが多いですね。
• 編集部
  リクエストの内容で困難なものや、要求するハードルの高いメーカーはありますか。
• Jeff氏
  皆さん実現できるものから不可能なものまで、いろいろなアイデアをお持ちです。それでも、長年オールインワン水冷ユニットを取り扱っていると、メーカーなりに経験値も貯まってくるためでしょうか。Asetekと長い付き合いのあるメーカーさんの要求は特に細かいですね（笑）。
• Mitch氏
  CORSAIRでもNZXTでも同じですが、今後はよりクライアントの要望に沿ってカスタマイズされた製品を提供する必要があると感じています。そのために、顧客からフィードバックされた点をR＆Dに持ち込み皆で検討、次の製品に活かす努力を続けています。もちろん技術的に不可能な点もありますが、積極的に新たしい技術を取り込んでいきたいと常に考えています。
• 編集部
  オールインワン水冷ユニットが、自作市場でヒットしてからだいぶ経ちました。愛用しているユーザーも多いですが、今後の展開はどのように考えていますか。
• Mitch氏
  やはりグラフィックスカードの水冷化だと思います。CPUは水冷化されている。それならば、PC内部の熱源として次にクローズアップされるのはGPUです。
• 編集部
  日本市場において、いち早くGeForce GTXシリーズの水冷化に成功しヒットさせたのがサイコムですが、Asetekから見てどのような印象でしたか。
• Jeff氏
  たしか2014年だったと思いますが、GeForce GTX 980を水冷化したBTOを発表しましたよね（編集部注：「BTO業界初GeForce GTX 980を水冷化。サイコム「G-Master Hydro」シリーズ受注スタート」）。その直後から、海外でも大きな話題となり、世界中のBTOベンダーから問い合わせが多数きたのです。もちろんサイコムの技術力もあっての製品ですが、GPUの水冷化がここまで注目を集めるとは正直Asetekとしても驚きました。

冷却ファンにNoctua「NF-F12 PWM」を搭載したAsetek「740GN」。サイコムカスタムの水冷版GeForce GTX 980は、国内外で話題になった