エルミタ的業界インタビュー Vol.29
2016.10.09 更新
文:GDM編集部 Tawashi
2014年に登場したAMD「Radeon R9 295 X2」グラフィックスカードで採用されたオールインワン水冷ユニットはAsetek製だった |
数年前までの自作市場では、水冷に対するハードルの高さを誰もが感じていた。しかし今、オールインワン水冷ユニットに限ってはそれを感じる人はいないだろう。空冷と同じ感覚で水冷が選択できるようになるまで、思いのほか時間が掛からなかったように思う。普及を加速させた背景には、水冷メーカーの試行錯誤と紆余曲折があった。Asetek無くして、オールインワン水冷ユニットの成長は無かった。
水冷に対する懸念は、ユーザーもメーカーも同じ。「水漏れ」という致命的な状況を、いかに無くすかという明確な目標は、冷却能力よりも優先すべき課題だった。構成パーツの改善や、テストデータの蓄積、製品改良を繰り返し、今日誰もが気軽に手にできるような製品を完成させた。それは自作PCの世界を一変させたのだ。オールインワン水冷ユニットの製造メーカーとして、圧倒的シェア率を誇るAsetekは、まさに影の功労者と言っていい。
今回、決して表舞台には出ないAsetekに会う貴重な機会を得た。一筋縄では解決できなかった課題や、ともすればどれも同じに見えるオールインワン水冷ユニットのカスタマイズ、そして開発の難しさや今後の展望まで、彼らの話はどれもが興味深いものばかりだ。
とりわけ、Mitch氏が学生時代に目の当たりにした、クーラント液が噴き出してデスクが水浸しになったというエピソードは、ユーザーの懸念そのものだった。そんな悪夢を経験したMitch氏が、オールインワン水冷ユニットを定着させた第一人者であるAsetekで今、手腕を発揮している。彼がその当時抱いた「水冷は怖いなというイメージ」は、すでに払拭されているだろう。そして再びその懸念が現実のものにならぬよう、市場の声に耳を傾け、こうしている間にも、改良および開発が行われているのだ。