エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.579
2017.06.30 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹
Ryzen 7 1700 実勢価格税込38,000円前後(2017年6月現在/発売中) 製品情報(AMD) |
AMD Ryzenシリーズが登場するまで、AMDのハイエンド帯を牽引してきたのが、2011年10月に登場したコンシューマ向け初の8コアCPU「AMD FX」シリーズだ。2基の整数演算コアと、1基の浮動小数点演算コアを統合した「Bulldozerモジュール」をベースにした「Bulldozer」アーキテクチャを採用。動作クロックやコア数の拡張が比較的容易に行える一方で、IPC(Instructions Per Clock)に劣るという欠点があり、登場当初からIntel CPUに対して苦戦を強いられた。その後、IPCを改善した「Piledriver」アーキテクチャや、コンシューマ向け初の5GHzモデル「FX-9590」などを発表したが、パフォーマンスアップは限定的。劣勢を覆すには至らなかった。
2011年10月にデビューした「AMD FX」シリーズ。最上位「FX-8000」シリーズでは、コンシューマ向け初の8コアを実現した | 「AMD FX」シリーズ最上位の「FX-9590」。TurboCore時には5.0GHzという高クロック動作が可能だが、そのぶんTDPも220Wへと大幅に引き上げられている |
そんな中、AMDが今年3月に投入した新CPUが「Ryzen」シリーズだ。コアアーキテクチャには約6年ぶりに刷新された「Zen」アーキテクチャを採用。浮動小数点ユニットの統合や、OPキャッシュの実装、1つの物理コアを論理的に2コアに見せかける「SMT」(Simultaneous Multithreading)、さらに高度なデータ予測アルゴリズムとCPUに実装された各種センサーの情報を有効に活用し、動作クロックとパフォーマンスを最適化する「SenseMIテクノロジー」など、内部設計を一から見直すことで、IPCは実に52%も向上。さらに最新の14nm FinFETプロセスを採用することで、消費電力は大幅に低減。8コア/16スレッドに対応しながら、上位モデルでも95W、下位モデルでは65Wという低消費電力駆動を可能にした。
内部設計の見直しにより、「AMD FX」シリーズの「Excavator」コアから、IPCは実に52%も向上しているという |
そのあまりの変わりように、発売前にはその実力を疑問視する声もあった。しかし発売後にその性能が証明されるや一気に人気が爆発。まさにAMDにとっては起死回生となる一撃になった。
Ryzen人気は台湾でも同様。「COMPUTEX TAIPEI 2017」に合わせて取材した「原價屋」では、AMDのシェアが5%前後から15%前後まで回復した |