エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.588
2017.08.05 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹
すべての製品で倍率ロックフリーを謳うRyzenシリーズ。TDPもハイエンドで95W、メインストリームでは65Wと低く抑えられているため、オーバークロック動作を検討している人も少なくないだろう。そこで、今回は倍率変更のみの簡易手動オーバークロックに挑戦。コア電圧をいじらずどこまでクロックを引き上げることができるのか、チェックしてみることにした。
「X370 Gaming-ITX/ac」では25MHz刻みにクロックを調整できるため、倍率変更のみでかなり細かなチューニングができる |
倍率変更のみの簡易チューニングながら、3.75GHzまではベンチマークも完走。なお倍率はアイドル時でも固定だが、コア電圧は変動する |
今回のCPUでは、定格+750MHzの3.75GHzまではOSの起動、ベンチマークとも問題なく動作させることができた。ちなみにもう1段階上の3.775GHzまでクロックを上げるとマルチコアテスト中にエラーが発生することがあるものの、再起動やフリーズなどの現象は発生せず。電圧を調整してやれば、もう少し上を狙うこともできそうだった。
CINEBENCH R15(cb) |
続いてオーバークロックの効果をレンダリングベンチマーク「CINEBENCH R15」で確認していこう。シングルコアテストで約10%、マルチコアテストでは約15%もスコアが上昇。特に負荷が上がりTurboCoreの効きが悪くなるマルチコアテスト時の効果は高く、レンダリングや動画のエンコードなど、重量級の処理や、複数同時処理を行う場合には簡易チューニングはかなりオススメだ。
最後に簡易チューニングによるオーバークロックで、どの程度消費電力が増えているのか確認していこう。アイドル時は起動直後10分間放置した際の最低値、高負荷時は「CINEBENCH R15」実行時の最高値とした。
消費電力(W) |
コア倍率が固定となるため少々心配していたアイドル時だが、定格との違いは+2.7Wで微増。8コア/16スレッドのCPUを必要とするパワーユーザーであれば気にする人はほとんどいないだろう。また高負荷時の消費電力も今回はコア電圧を調整していないため、+13.8Wと常識的な範囲に収められている。8フェーズの堅牢な電源回路を搭載する「X370 Gaming-ITX/ac」だけに、もう少しアグレッシブなオーバークロックをしても問題ないだろう。
ASRockでは初のRyzen対応Mini-ITXマザーボードとなる「Fatal1ty X370 Gaming-ITX/ac」。Chris Lee氏が日本市場を強く意識したというだけあり、8フェーズのデジタル回路や、「Super Alloy」準拠の高品質コンポーネント、Intel製ネットワークチップなど安定性・堅牢性を重視した作りは非常に好感が持てる。特に国内ユーザーに人気のIntel製ギガビットLANを搭載したRyzen向けMini-ITXマザーボードは、ASRock「Fatal1ty」シリーズの2製品しかなく、他メーカーにはない強みだ。
最新機能をバランスよく搭載する正統派モデルに仕上げられた「Fatal1ty X370 Gaming-ITX/ac」。ミドルレンジからハイエンドの選択肢が少ないMicroATXマザーボードの代替えとしてもオススメだ |
USB3.1 Gen.2ポートに非対応となる点は少々残念だが、それ以外の機能についてはほぼすべて網羅。さらにオーバークロック耐性も良好で、基本的な運用であればハイエンドクラスのATXマザーボードと比較してもその違いを感じることはないだろう。Intel LGA1151に比べて、MicroATXマザーボードのラインナップが弱いAMD Socket AM4。充実した機能を備える「Fatal1ty X370 Gaming-ITX/ac」は、Mini-ITXケースを使う超小型PCはもちろん、ミニタワーPCのコアとしても魅力的な製品だ。
協力:ASRock Incorporation