エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.589
2017.08.07 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹
最後に消費電力の違いと、リファレンスクーラーの冷却性能を確認していこう。測定は起動直後10分間何もせず放置した際の最低値をアイドル時、ストレステスト「OCCT 4.5.0:CPU」実行時の最大値を高負荷時に設定。“Wattup Pro”を使用して消費電力を計測している。
消費電力計測(W) |
CPU温度(℃) |
Core i5-7600との比較ではアイドル時で2.7W、高負荷時でも5.9Wとその差はごくわずか。最大消費電力は125.1Wまでしか上がらず、300W前後の電源ユニットでも十分まかなえる計算だ。特に今回のようにMini-ITXフォームファクタのコンパクトPCで、性能にもこだわりたいならRyzen 5 1600は非常に有望な選択肢になる。
またリファレンスクーラーの性能を比較すると、負荷の低いアイドル時はいずれも30℃前半で冷却性能に大きな違いはなし。しかし高負荷時はRyzen 5 1600が58℃で頭打ちになるのに対し、Core i5-7600では74℃まで上昇。TIMの違いなどクーラー以外の要因もあるが、リファレンスクーラーで十分な冷却性能を発揮できるのは、ミドルレンジクラスのCPUでは大いに評価できる。
これまでハイエンドプラットフォームでしか実現できなかった、6コア/12スレッド構成を普及価格帯のミドルレンジに持ち込んだRyzen 5 1600。マルチタスクに対応するアプリケーションでは、AMDが直接対抗と位置づけるCore i5-7600を圧倒するパフォーマンスを発揮。さらにZenアーキテクチャでは大幅にIPCが改善されたこともあり、シングルタスク処理も十分高速。最高クロックに500MHzの開きがあるにも関わらずその差は約4%前後とわずか。実際の運用では複数のアプリケーションを同時に処理することが多いことを考慮すれば、シングルタスク処理でもほとんど違いは出ないはずだ。
6コア/12スレッドに対応するRyzen 5 1600。ハイエンドプラットフォームに匹敵する性能を格安で実現することができる |
それでいて、消費電力は最大でも130Wを超えることはなく省電力性も優秀。さらにリファレンスクーラーの運用でも温度が60℃を超えることはなく、電源ユニットや冷却システムに掛かるコストを最小限に抑えることができるのも普及価格帯モデルでは重要なポイントだ。
消費電力や価格のバランスを崩すことなく、永らく4コア/4スレッド構成が定番だったミドルレンジCPUの常識を覆すマルチスレッド性能を実現したRyzen 5シリーズ。その勢いは当分収まりそうもない。