エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.598
2017.09.16 更新
文:テクニカルライター・藤田 忠
GeForce GTX 1060 6GB×4枚とRadeon RX 570×5枚を搭載した「Storm Miner BE Plus Kit」で、実際に仮想通貨のマイニングを試していくことにした |
さっそく「Storm Miner BE Plus Kit」による仮想通貨のマイニングを試したいところだが、まず動作音に言及しておこう。GPU負荷が常に100%になるので、グラフィックスカードを9枚搭載した時点で、その動作音は容易に想像できるわけだが、「Storm Miner BE Plus」」自体の動作音も非常に大きい。自作PCのようなファンコントロール機能はなく、電源ユニット搭載の2基と筐体のフロント×5基、リア×5基の計12基の冷却ファンは通電開始とともに最大で回転。そのため電源ユニットと筐体の冷却ファンのみでも騒音値は56dBA前後に達してしまう。さらに。今回使用したグラフィックスカード×9枚でのマイニング中は65dBA~70dBA程度まで上昇。日中の隣室ならあまり気にならない騒音レベルだが、同じ部屋に長時間居るのは、正直ちょっと厳しい。
一般住居で使うには配慮が必要な騒音値だが、10基のファンで冷却と排気に不安のないエアフローを生み出している |
9枚のグラフィックスカードを搭載した状態で、標準搭載のmSATA SSDに導入したWindows 10を起動してみると、CPU内蔵GPUの「Intel HD Graphics」に加えて、GeForce GTX 1060 6GB×4枚、Radeon RX 570×5枚を認識。そのまま、「NiceHash Miner Legacy 1.8.1.2」で採掘も可能だったが、GeForce GTX 1060 6GB×4枚、Radeon RX 570×5枚の構成では、GPU負荷100%となるマイニング時の消費電力は1,200Wを超えてしまった。そのため、最終的には8枚のグラフィックスカードで動作を試すことにした。
同じGPUでもオーバークロック仕様など、グラフィックスカードで消費電力は異なるので、グラフィックスカードのチョイスは慎重に行ないたいところだ。
Inno3D「Inno3D GeForce GTX 1060 6GB Compact」とMSI「Radeon RX 570 ARMOR 4G OC」を、各4枚搭載した際の総消費電力は1,200Wに収まった |
合計10基の吸排気ファンによる強力なエアフローで、6時間ほどGeForce GTX 1060 6GB×4枚、Radeon RX 570×4枚の構成でマイニングを行なったところ問題なく動作。さすがにシングルファンVGAクーラーの「Inno3D GeForce GTX 1060 6GB Compact」は、GPU温度は80℃前後になったが、デュアルファンVGAクーラーの「Radeon RX 570 ARMOR 4G OC」はGPU温度60℃台をファン回転数20%台で維持した。結果はGPUや搭載するVGAクーラーにより異なるものの、計10基の冷却ファンを搭載する「Storm Miner BE Plus Kit」。ケース内部の排気は効率よく行われているようだ。
同一グラフィックスカードを8枚まで認識できるWindows 10。GPU混在なら、10基のGPUもすんなり認識していた |
AMD、NVIDIAのツール上でも「Storm Miner BE Plus Kit」に搭載した複数GPUを認識 |
マイニング環境構築時の定番ツールとなっているGPUカスタマイズツールのMSI「Afterburner」。こちらも8基までのGPUを認識、制御できる |
GeForce GTX 1060 6GB×4枚、Radeon RX 570×5枚の構成では、消費電力が1,300W台になってしまったが、動作は可能だった |
最大9枚のグラフィックスカードを搭載でき、計10基の冷却ファンで効率よく内部の熱を排気するマイニング向けベアボーンキット「Storm Miner BE Plus Kit」。OS導入やグラフィックスカードの取り付けなどは必要だが、自作PCパーツで構築した際に付随するライザーカードを用いたPCI-Expressスロットの延長や各種電源ケーブルの取り回しに、リグ(PC台)の作成からグラフィックスカード、リグ全体の冷却・排気といった面倒をあまり考えずに済むのは、ベアボーンキットならではだろう。
比較的容易に、9枚のグラフィックスカードを搭載できる「Storm Miner BE Plus Kit」 |
「Storm Miner BE Plus Kit」は専用設計になるため、保守パーツの確保が困難になってしまう。ただし9枚のグラフィックスカードによるマイニングマシンを手間をかけずに構築できる点とトレードオフと言える。手軽にマイニングファームの構築に挑戦したい人には、気になる存在ではないだろうか。
協力:ストームシステムテクノロジー
株式会社アイティーシー