エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.604
2017.10.07 更新
文:テクニカルライター・宮崎 真一
それでは実際に「GAME BOOST」を利用して、Ryzen Threadripper 1950Xのオーバークロックに挑戦してみたい。「GAME BOOST」では、「Precision Boost」や「XFR」といったCPUの自動オーバークロック機能は無効となり、ツマミを回すことで1/2/4/6/8/10/11の7段階に全コアがオーバークロックされる。Ryzen Threadripper 1950Xの場合、「Gear 10」までは50MHzずつ、「Gear 11」では100MHz上昇する。「Gear 11」では全コアが4.1GHzで動作することなり、16コアすべてが4.0GHz以上で動作している様子は圧巻だ。
付属アプリケーションの「Command Center」から「GAME BOOST」を確認した様子。ツマミの右側に各Gearの動作クロックが明示されている。「X399 GAMING PRO CARBON AC」でもGear変更後、再起動が必要となる点は従来のマザーボードと同じだ |
「Gear 1」:3.75GHz | 「Gear 2」:3.80GHz |
「Gear 4」:3.85GHz | 「Gear 6」:3.90GHz |
「Gear 8」:3.95GHz | 「Gear 10」:4.00GHz |
「Gear 11」:4.10GHz |
今回の環境では「Gear 11」の全コア4.1GHzでOSは起動するものの、「CINEBENCH R15」を実行するとシステムがフリーズしてしまった。そこで、「CINEBENCH R15」が安定して動作する設定を探ったところ、「Gear 8」の3.95GHzが最高となった。
そのときのスコアを見てみると、シングルコアは2%しか差がなかった。これは、定格動作では「Precision Boost」や「XFR」で動作クロックが向上するためだ。一方、マルチコアは「Gear 8」が11%もの高いスコアを示しており、オーバークロックの効果が確認できる。CPU標準の自動オーバークロック機能は全コアに対して働くものではないため、全コアをオーバークロックする「GAME BOOST」を利用するメリットは大きい。
オーバークロック時の消費電力も確認しておきたい。今回は、「CINEBENCH R15」実行時における最も消費電力が高くなる時点を高負荷時、システム起動後10分間放置した時点をアイドル時とし、定格動作と「Gear 8」動作のそれぞれにおいてシステム全体の消費電力を比較している。
結果はグラフのとおり。アイドル時こそあまり違いはないものの、高負荷時には86Wもの差が付いてしまった。やはり、オーバークロックの代償はそれなりに支払っている印象だ。もともと、Ryzen Threadripper 1950XのTDPは180Wもあり、それをオーバークロックすると消費電力の増大はかなりリスキー。しかし、それでも安定動作を実現した「X399 GAMING PRO CARBON AC」は、高品質な電源回路による恩恵がかなり大きいと言っていい。
最上位モデルでは16コア/32スレッドという、サーバーモデル顔負けのコア数を誇るRyzen Threadripper。特にエンコードやリアルタイムレンダリングなど、マルチスレッド処理を行う人には魅力的な製品だ。しかし、ハイエンドらしく価格もなかなかのもの。先日の価格改定や下位モデルの投入により、発売当初に比べればこなれた感はあるものの、いまだ高価なCPUである点は変わらない。
こうしたハイエンドCPUを活用するのであれば、マザーボードにも妥協せず、ハイスペックな製品をチョイスしたい。その点、「X399 GAMING PRO CARBON AC」なら、「ミリタリークラスVI」準拠の高効率デジタル電源回路をはじめとした高品質設計により、安定性・信頼性に不安はなし。さらに音質に定評のある「Audio Boost 4」や、4-Wayのマルチグラフィックス対応、ゲーミングに最適化したネットワーク機能など、ハイエンドゲーミングPCとしても十分なスペックを誇る。
また全コアが4.0GHzを目指せるオーバークロック耐性は、パフォーマンスを追求するエンスーユーザーも満足いく出来ばえ。Ryzen Threadripperのポテンシャルを最大限に引き出し、重量級の作業も難なくこなす。そういったニーズにまさに打ってつけの1枚だ。
協力:エムエスアイコンピュータージャパン株式会社