エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.636
2018.02.15 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 松枝 清顕
最後に水冷ユニット導入におけるチェックポイントを解説しよう。メーカー製品サイトや展示会でも、デュアルラジエター構成の搭載例がアピールされており、「ENTHOO EVOLV SHIFT」に魅力を感じた自作派は少なくないだろう。
外観からおおよそ想像できる内部容積から、2つの水冷ユニットが搭載できることは驚異的であり、最大のアピールポイントといえよう |
搭載できるラジエターは120mmサイズで、マザーボードの下段、「Motherboard Cable Cover」下のエリアにL字型で2台がマウントできるようになっている。今回の検証では都合により、グラフィックスカードの水冷モデルは用意できなかったが、多くの人が試すであろう、CPU用簡易水冷ユニットを搭載し、クリアランスや設置作業における注意点を解説しよう。
最も現実的であり、搭載ケースが多いであろう120mmサイズラジエター仕様の簡易水冷ユニットを組み込んでみた。先に解説通り、ラジエターが搭載できる面は2箇所。1台構成であれば、どこに搭載しても問題は無いが、今回はボトム面に設置を試みた。
SFX規格の電源ユニットと干渉する事もなく、チューブの取り回しもスムーズ。CPUソケット周辺やその”上空”も十分にクリアランスが確保できており、搭載作業自体もさほど難しく感じる事はなかった。CPUクーラーの有効スペースは高さ82mmだが、発熱量の多いCPUを搭載する場合、空冷ではやはり心許ない。ポンプ一体型ウォーターブロックはコンパクトで、冷却能力は高い。近頃リリースされる省スペース型PCケースの多くは、冷却に簡易水冷クーラーが搭載できるように設計されている。コンパクトかつパワフルなPCを構築するなら、積極的に水冷の導入をオススメしたい。
エアフロー設計のポイントは煙突構造。熱が上昇する特性を生かし、下部から上部へ空気の流れを作り出す。その意味では、ボトム面を利用したラジエターの設置は理に適ったスタイルと言えるだろう。なお25mm厚ファンはキレイに収まり、インレット中継ケーブルにも影響はない |
Phanteksが提唱する搭載例のように、2つのラジエターを設置する構成は、果たして現実的なのだろうか。例にならうと、CPU冷却用はフロント面への縦置き、GPU冷却用はボトム面への横置きが推奨されている。これを実現するためには、隣接する構成パーツ同士の共存が重要になってくる。
最も気になるのが、ボトム面のラジエター設置だ。この面はSFX規格の電源ユニットとスペースを分け合う事になる。SFX規格の電源ユニットは高さが63.5mmで、残りのスペースが横置きラジエターの”取り分”になる。ここを稼ごうとするなら、ボトム面のラジエターを可能な限りSFX規格の電源ユニット側に寄せる必要がある。しかしインレット中継ケーブルがボトム面の冷却ファンを押し返すため、なかなか思うようにいかない。搭載テストにCPUクーラー用ラジエターを装着してみたところ、どうにか収める事はできた。ただし一筋縄ではいかない。
縦置きラジエターの設置には、横置きラジエターを電源ユニットギリギリまで接近した状態で固定する必要がある。ちなみに搭載サンプル品では最大で45mmの空間が確保できた |
インレット中継ケーブルの処理も難関のひとつ。最悪の場合、リブ無しフレームの冷却ファンを使い、干渉する箇所のみネジ留めをせずケーブル用エリアを稼ぐという方法もある |
ラジエター同士が最も接近する部分では、どうしてもウォーターチューブが重なってしまう。できる限りストレスなく作業するには、縦置きラジエター→横置きラジエターの順で搭載したい |