エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.655
2018.05.03 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹
UEFIに豊富なチューニング項目が揃う「X470 Taichi Ultimate」。設定次第では高速なRyzenシリーズの性能をさらに引き上げることができる |
続いて、堅牢な電源回路と豊富なチューニング項目を活かし、Ryzen 7 2700Xの簡易オーバークロックに挑戦していこう。今回はコア電圧をUEFIの安全圏内とされる1.44350Vまでに抑えて動作クロックを調整し、どこまでクロックを引き上げることができるのかチェックした。
電圧1.400V、コア倍率42.5倍まではWindowsの起動、「CINEBENCH R15」とも問題なく動作。またWindowsの起動だけなら電圧1.44350Vで、44.0倍まで引き上げることができた |
まず1.44350VでOSが起動するクロックを探ったところ44.0倍の4.40GHzまで引き上げることができた。その後「CINEBENCH R15」が完走するクロックを探り、電圧ギリギリまで下げたところ電圧1.400V、コア倍率42.5倍の4.25GHzが限界だった。Ryzen 7 2700XのMax Boost Clockが4.30GHzであることを考えると、第2世代Ryzenシリーズのオーバークロックマージンは今のところそれほど大きく無いようだ。
そして「CINEBENCH R15」のスコアを確認すると、シングルコアテストは定格でもほぼ同等までクロックが引き上げられるためほとんど変化なし。一方マルチコアテストは約5%スコアが上昇しており、マルチスレッド処理性能を少しでも上げたい場合にはオーバークロックを検討してみるといいだろう。
最後にオーバークロックによってどの程度消費電力に影響があるのかチェックしていこう。
省電力機能が有効になるアイドル時はコアクロック、コア電圧とも同じレベルに下がるため消費電力に大きな違いはなし。しかし高負荷時はコア電圧を1.400Vまで引き上げているため約75Wと大幅に消費電力が増加。第2世代Ryzenの上位モデルでオーバークロックをする場合には、「X470 Taichi Ultimate」のような堅牢な電源回路と強力な冷却機構は必須条件だ。
第2世代Ryzenそのものが既存のSocket AM4プラットフォームを流用できることもあり、小幅な変更にとどまったAMD X470。確かに2つのストレージを統合できる「AMD StoreMI」は魅力的な機能で、これから新規にハイエンドPCを組む場合には敢えてAMD 300シリーズを選択する必要はない。一方、初代Ryzenシステムからのアップグレードを検討している場合、AMD X470チップセットにはあまりメリットを感じていないという人も少なくないはずだ。
独自機能が着実に進化した「X470 Taichi Ultimate」。初代Ryzenシステムからのアップグレードとしても十分魅力的な存在だ |
一方、「X470 Taichi Ultimate」に目を向けると大幅に機能が追加されたRGB LEDライティング「Polychrome RGB」や、より凝った意匠のチップセットヒートシンク、優れた冷却性能と一体感のあるスタイルを実現したM.2ヒートシンクなど、機能・デザインとも大きく手が加えられ、強化ガラスケースを使い“魅せる”ゲーミングPCを構築している(もしくは構築する)人にとってはかなり魅力的な製品に仕上げられている。
さらに「Taichi」シリーズでは初めてほぼ同時に2つのセグメントの製品が用意され、ユーザーが用途に合わせてチョイスできるのも大きなメリット。10ギガビットLANによる高速ネットワークや、ピーキーなチューニングをする予定なら今回検証した「X470 Taichi Ultimate」が、定格運用やライトなチューニングで抑える予定なら「X470 Taichi」がオススメだ。
協力:ASRock Incorporation