エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.664
2018.06.26 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 絵踏 一
「PFU Limited Edition」が採用するキースイッチは、東プレが誇る静電容量無接点方式だ。文字通り機械的な接点が存在しないスイッチ機構で、円錐スプリング(コニックリング)の屈曲による静電容量変化を検出し、一定の値を超えた際に入力を認識する(オンになる)という仕組み。一般的なスイッチ故障のほとんどを占める接点摩耗とは無縁であり、耐久性が抜群に高い。
東プレ式の静電容量無接点スイッチは、コニックリングの屈曲で静電容量変化を読み取る方式。カップラバーは入力認識とは無関係のため、完全に荷重特性優先で設計されている |
荷重特性優先のシンプルな構造になっているため、非常に滑らかな感触が味わえる |
また、スプリングを覆うカップラバーは荷重特性の決定にしか関与しないため、キータッチはきわめて滑らか。羽毛をイメージさせる柔らかな打鍵感から、愛好家の間で“フェザータッチ”と呼ばれるのも納得だ。
ちなみに「REALFORCE R2」世代はフルNキーロールオーバーに対応。高速に同時入力を行った場合でも、押下した順番にすべての入力が認識される。さらにスイッチが入る位置と切れる位置に差(ヒステリシス)を設ける設計により、“半端押し”によるチャタリングが発生しないというメリットもある。
静音仕様の静電容量無接点スイッチを搭載している「PFU Limited Edition」。紫色のプランジャーが静音仕様の目印だ |
そして「PFU Limited Edition」では、この静電容量無接点スイッチに静音仕様を施した、「HHKB Pro Type-S」と同等の静音設計が採用されている。そもそもスイッチの性格上、それほど打鍵音のうるさい機構ではないのだが、押し込んだキーが戻る際、跳ね返ったプランジャー(軸)がハウジングに当たる際の音が主たる騒音源なのだという。そこでプランジャーを特別仕様に改良することで跳ね返り音を抑え、打鍵音を30%低減させることに成功している。
「PFU Limited Edition」のスイッチ機構を語る上で、外せない要素が東プレ独自の「APC(Actuation Point Changer)」機能だ。「REALFORCE R2」の上位モデルに搭載される、アクチュエーションポイントの可変機能で、入力の反応位置を1.5mm/2.2mm/3mmの3段階から選ぶことができる。まさに静電容量変化で入力を認識するという、静電容量無接点方式ならではの特性を活かした機能。「COMPUTEX TAIPEI 2015」でコンセプトモデルが披露された際はド肝を抜かれたものだったが、いまやその機能が製品版に落とし込まれ、当たり前に使えるようになっている。
静電容量変化をリニアに読み取る仕様を活かし、認識点を可変させる機能を生み出した。切り替えられるのは3段階だが、製品化前のコンセプトモデルでは256段階の読み取りが可能だったため、技術的にもかなり余裕があることが窺える |
なお、仮に最も短接点の1.5mmに設定した場合などは、通常のタクタイルフィールとのズレが気になるところ。そこで「PFU Limited Edition」では、APC機能設定に応じて設置するためのキースペーサーが標準で付属している。いわば“上げ底”をするためのシートで、1.5mm設定用の3mm厚と、1.5mm/2.2mmに対応する2mm厚の2つが同梱。人工的に早く底打ちさせることでストロークの戻りが早くなるとともに、短接点設定時の入力の違和感を解消させている。
APC設定と連動して、ストロークの戻りを早くさせるためのキースペーサー。主要キーをすべて取り外して設置する面倒はあるが、効果はかなり実感できる |