エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.702
2018.12.08 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 松枝 清顕
組み込みセッションの最後に、簡易水冷ユニット搭載を試みる。ちなみに「P101 Silent」の内部構造を見ると、どうやらDIY水冷導入は想定されていない。本格的な水冷を構築するユーザーの多くは、自らのスキルとテクニックで器用に組み上げてしまうものだが、いかんせん設計上、ポンプやリザーバーを設置するスペースがない。3.5インチシャドウベイを取り払う手はあるが、そもそも密閉構造のプロダクトだけに、美しく仕上げた水冷システムを閉じ込めてしまうのは忍びない。設計思想のベースが「P100」である事を考えれば、ここは簡易水冷に任せた方がいいだろう。
そこで用意したのがAntec「Mercury360 RGB」だ。360mmサイズラジエターを備えたシリーズ最上位モデルで、これをフロントパネル裏面に設置して水冷PCを構築してみた。
180mmの有効スペースに全高60mmのウォーターブロックは当然収まりがいい。360mmサイズラジエターは3.5インチシャドウベイを取り外した状態でマウント。標準装備の冷却ファンも「Mercury360 RGB」付属ファンに全て換装した |
「Mercury360 RGB」のラジエター厚は27mm。搭載後、隣接する3.5インチシャドウベイユニットとの隙間は10mmほど確保できている。両者の居住スペースに問題はない事が分かる |
「Mercury360 RGB」搭載作業自体の難易度は低く、自作PCのライトユーザーでも組み込む事はできるだろう。とは言え少々手こずったのが、3.5インチシャドウベイの着脱だった。
密閉されたサイドパネルにより、閉じ込めてしまう事は知りつつも発光するCPUソケット周辺。メモリには「ANTEC MEMORY 5 Series」を使った |
フロント部に360mmサイズラジエターを搭載するには、全8段仕様の3.5インチシャドウベイを全て取り外す必要がある。ユニット1つ当たり4本のハンドスクリューで固定されているため、合計16本のネジを緩める計算。そしてラジエター固定後は再び16本のネジを締めるワケだ。当たり前とは言え、その間でも標準ファン3基の取り外しと、ラジエターの冷却ファンの固定で12本のネジを着脱しているだけに、なかなか骨が折れる作業だった。構成パーツの確実な固定方法でネジ留めに勝るものはないが、作業を軽減するひと工夫があってもいいように感じた。
騒音値の低い冷却ファン、駆動音の無いSSD、低負荷時は冷却ファンが停止状態となるVGAクーラー搭載のグラフィックスカードなど、パーツの進化により今や静音PCの構築には特別なスキルが必要ではなくなりつつある。しかし、さらなる静音を求め対策を施すのが、Antecがこだわり続ける「積極的静音志向」。その信頼性の高さから、今もなお多くの支持を集め、新製品に対する期待は大きい。
名機「P100」からひとつ数字を増やし、静音を主張するキーワードを付け加えた「P101 Silent」は、Antecの今できる「積極的静音志向」の集大成だ。流行の強化ガラス製サイドパネルも密閉型ではあるものの、遮音性を高める二層構造のパネルで囲われた筐体には一日の長を感じさせる。「P100」世代で完成された構造を継承し、ボトムカバー(シュラウド)を新たに設置。現代風にアレンジしてみせた新モデルは、現代版「P100」として十分に通用するだろう。
そして内部設計のポイントは、そびえ立つ全8段仕様の3.5インチシャドウベイ。ストレージ事情の進化からやや前世代的な感は否めないが、「P100」の後継機「P101 Silent」では、これを敢えて省略しなかった。ストレージをより多く搭載させたいニーズは根強く、歓迎する人はまだまだ少数派ではないはずだ。
魅せるPCとはやや距離を置くプロダクトとあって、DIY水冷の構築はさほど念頭になく、それらしいアピールは見当たらない。主張の薄いPCケースが多い中、頑なとも言えるAntec開発陣の設計思想はかえって新鮮に映る。Antecの主力モデルである「Performance」シリーズは、上手く世代交代を果たした。
協力:Antec
株式会社リンクスインターナショナル