エルミタ的一点突破 Vol.49
2019.02.04 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 松枝 清顕/池西 樹(テストセッション)
ここからはサイズ「大手裏剣参」を実際のPCに組み込んで、冷却機器としての実力を確認していこう。検証用のCPUには、Coffee Lake Refreshの最上位モデルCore i9-9900Kを用意。ヒートパイプの向きは、ベンチマーク台を縦置きにして、下向きと上向きの2種類で検証を実施した。またストレステストは「OCCT 4.5.1」、CPUの温度およびファンの回転数の測定は「HWiNFO64 v6.00」を使用し、アイドル時は起動直後10分間放置した際の数値、高負荷時は「OCCT 4.5.1:CPU:OCCT」を動作させ、30分経過した際の数値をそれぞれ採用している。
Core i9-9900Kの「CPU-Z 1.87.0」の結果。アイドル時は800MHz、シングルコア処理時は最高5.00GHzまでクロックが上昇する |
8つのコアで温度にばらつきがあるため、今回は「CPU Package」の温度を採用 | ファンの回転数も「HWiNFO64 v6.00」で計測を行った |
まずアイドル時の温度を確認すると40℃前後で、冷却性能は完全に飽和している。また高負荷時の温度はおおむね80℃前後、突発的に温度が上がるスパイク値も86℃が最高だった。ちなみに「HWiNFO64 v6.00」のログを確認したところ、ストレステスト中は4コア以上の最高クロック4.70GHzを維持しており、サーマルスロットリングと思われる症状は一切発生していなかった。8コア/16スレッドになり、CPUのみの負荷テストでも220Wを超える電力を消費するCore i9-9900Kだが、「大手裏剣参」なら冷却性能に問題はない。
下向き(左)、上向き(右)とも「OCCT 4.5.1:CPU:OCCT」実行中のクロックは4.70GHzを維持できていた |
そして下向き、上向きの温度を比較するとアイドル時は全く同じ。高負荷時もその差は1℃しかなく誤差の範囲に収まった。前述の通り「大手裏剣参」は、ヒートパイプの向きについて厳密に気にする必要はなく、使用するメモリや、周辺コンポーネントの冷却によって選択すればいいだろう。
下向き/アイドル時(正面)のサーモグラフィー結果 | 下向き/高負荷時(正面)のサーモグラフィー結果 |
下向き/アイドル時(下側)のサーモグラフィー結果 | 下向き/高負荷時(下側)のサーモグラフィー結果 |
上向き/アイドル時(正面)のサーモグラフィー結果 | 上向き/高負荷時(正面)のサーモグラフィー結果 |
上向き/アイドル時(上側)のサーモグラフィー結果 | 上向き/高負荷時(上側)のサーモグラフィー結果 |
またサーモグラフィーの結果を確認すると、いずれも高負荷時にはヒートパイプやその周辺の温度が上昇している。このことから、向きに関係なく受熱ベースで吸収した熱はヒートパイプを伝って、効率よくヒートシンクへと拡散できているようだ。
続いてファンの回転数をチェックしていこう。消費電力が40W弱に抑えられるアイドル時は、ファンの公称最低回転数を若干下回る290rpmの超低速回転で動作する。ただし、高負荷時は、公称最高回転数の約85%となる1,500rpm前半で推移しており、冷却性能としてはかなり限界に近いことがわかる。
また下向きと上向きのスコアを確認すると、回転数に大きな違いは出なかった。CPUの温度、ファンの回転数とも差が無いことから、やはり「大手裏剣参」は、ヒートパイプの向きの影響をほとんど受けないCPUクーラーである事がわかる。
テストセッションの最後は、ファンから30cmの位置に設置したデジタル騒音計を使い、騒音値を測定してみることにしよう。
290rpm前後で推移するアイドル時は、暗騒音から1dBA未満の差しかなく、ファンレスとほとんど変わらないレベル。PCケースや電源ユニットにファンを搭載していた場合は、間違いなくそちらの方が気になるだろう。また高負荷時でも騒音値は40dBAを超えることはなく、リテールクーラーを使っていてファンのノイズが気になっているなら、「大手裏剣参」の導入によって、冷却性能だけでなく静音性の向上も大いに期待できる。