エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.721
2019.02.27 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 松枝 清顕
次にもうひとつの基幹パーツである、グラフィックスカードを搭載してみよう。テストにはMSI「RTX2080 GAMING X TRIO」を用意した。型番からも分かる通り、NVIDIA GeForce RTX 2080 8GB GDDR6を搭載するハイエンドモデル。3スロットを占有するVGAクーラー「Tri Frozr」を装備し、奥行きは堂々の300mmオーバーとなる327mmとされる。
フロントパネル(標準搭載ファン)まで障害物がなく、グラフィックスカードにとって実に快適な居住性であろう。300mmオーバーの「RTX2080 GAMING X TRIO」でさえ、搭載後約90mmのスペースが残されている |
拡張スロットのネジ留めは筐体外部から行う設計。内部の空間を少しでも確保したい小型PCケースで用いられる手法だが「MPG GUNGNIR 100」ではその必要がない程に有効スペースが広い |
長尺グラフィックスカードを物ともしない「MPG GUNGNIR 100」。では厚さに対するクリアランスはどうだろう。そこで今度はMSI「GeForce RTX 2080 Ti GAMING X TRIO」を2枚用意。NVIDIA NVLinkによる2-way SLI構成で搭載テストを試してみた。カード1枚あたりの厚さは55.6mmとなり、2枚のカードは巨大な塊となって、PCケース内部を占有する事になる。
3スロット/枚占有の「GeForce RTX 2080 Ti GAMING X TRIO」を2枚で合計6スロットを消費。それでも問題無く「MPG GUNGNIR 100」に収める事ができている |
さすがに3スロット占有ともなれば、ボトムカバーと下段の「GeForce RTX 2080 Ti GAMING X TRIO」がかなり接近した状態になる。問題はボトムカバー上のグロメット付きスルーホールからPCIeケーブルを引き出すと、自慢のVGAクーラー「Tri Frozr」の冷却ファンに干渉してしまう。残念ながらPCIeケーブルは別経路を探すしかない |
ここでドレスアップと実用を兼ねた「ATLAS MYSTIC ARGB」をご紹介しよう。国内市場でも3月中旬より販売が予定されているグラフィックスカードホルダーだ。透明アクリル板にレーザー刻印が施され、RGB LEDを内蔵。Mystic Light Syncをサポートし、マザーボードの3pin RGBコネクタに接続すると美しく発光する。なおシャーシへの固定は拡張スロット金具3つのネジ穴に共締めするだけ。手軽に取り付けができる。
金属製ではなくアクリル製のグラフィックスカードホルダー。やや剛性が気になるところだが、公称最大7.5kgまでをサポート。下支えするアクリルプレートは2本のネジで固定。計10箇所のポジションから設置場所が任意で選択できる |
ボトムカバーは着脱ができないため、電源ユニットは右サイドパネル側から挿入する事になる。有効スペースは公称200mm(実測230mm)だが、検証にはやや控え目な奥行き140mmの電源ユニットを用意した。搭載はリア面からネジ留めする従来通りの固定方式。設置面備え付けのラバーの上に電源ユニットを載せてマウントする。
隣接する3.5インチシャドウベイユニットまでは約90mmのマージンがあるため、電源ユニットにとって居住性は悪く無い。とは言え、プラグインコネクタの抜き差しはしにくいため、予め必要箇所は接続した上でネジ留めした方がいいだろう。
検証にはCooler Master「MasterWatt 650」(型番:MPX-6501-AMAAB-JP)を使用。高さ86mmは電源規格通りだが、挿入部分の上下幅がややタイトだけに、油断すると両者に傷を付ける可能性がある |
最後に水冷ユニットの搭載も試みた。検証では120mmファン3基を搭載する、360mmサイズラジエター採用のオールインワン型水冷ユニットを用意。表面積が広く冷却に有利なラジエターをトップパネルに固定している。おさらいすると、マザーボード上部の有効スペースは実測で約60mmm。ここに合計52.2mm(27.2mm厚ラジエター+25mm厚冷却ファン)ラジエター+ファンをスッポリと収める事ができた。
検証にはCooler Master「MasterLiquid ML360R RGB」(型番:MLX-D36M-A20PC-R1)を使用している |
気になるのは2点で、ラジエターを固定するシャーシ側ネジ穴と、ラジエターのネジ穴が一部合わないため、ネジ留めができない箇所が発生。さらにリア120mmファンとチューブがかなり接近している。
前者は天板のネジ留め用スリットを広げれば解決できるし、一部ネジ留めができない状態でも、動作には支障がない。そして後者は「MPG GUNGNIR 100」に限らず、大型ラジエターを搭載するとよく起こる事で、インペラに接触していなければ、それほど気にする事は無いだろう。
昨年、本格的にスタートしたPCケースカテゴリへの参入。基幹パーツ専売メーカーの印象が強いMSIだけに、(CPUクーラーほどではないものの)当初はとても意外な印象を持った。しかしよく考えるとこれも自然な流れで、対応周辺機器のライティング効果を結びつけるMystic Light Syncの登場により、自作PCパーツは”トータルで一括制御する”という考えが意味を持つようになった。”魅せるPC”のブームが、新たなカテゴリへの道筋を付けたと言ってもいいだろう。
冒頭触れた通り、PCケースカテゴリ参入第1弾よりも”魅せる度”は若干抑え気味な第2弾だが、Mystic Light Sync対応のマザーボードやグラフィックスカードで組み上げた「MPG GUNGNIR 100」は当然収まりがいい。肝心なPCケース自体の評価は及第点以上で、大きなマイナス点は見当たらない。唯一フロントパネルがやや華奢に感じるが、目くじらを立てるほどではない。
構成パーツはMSI製がよく似合う。とは言え、MSI製以外のパーツ構成でも、PCケースの使い勝手の良さは十分に感じる事ができる。ここまで順調なMSI製PCケース。少々気が早いが、第3弾も大いに期待してしまう。
協力:エムエスアイコンピュータージャパン株式会社