エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.722
2019.03.02 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹
2枚のグラフィックスカードに同時に負荷がかかり、エアフローも悪化する「NVLink SLI」では、単体時に比べてはるかにVGAクーラーの性能が重要になる。そこで、ここからは「GeForce RTX 2080 Ti GAMING X TRIO」の3連ファンクーラー「TRI-FROZR」の実力をチェックしていくことにしよう。ストレステストは「3DMark」の「Time Spy Extreme Stress Test」を使い、起動後10分間何もせず放置した状態をアイドル時、ストレステスト実行時の最高値を高負荷時として、それぞれのGPU温度、ファン回転数、騒音値を測定した。
省電力機構が働くアイドル時は、「NVLink SLI」を構築した場合でもGPUの温度は50℃前後で、ファンの回転は完全に停止する。また高負荷時でも単体や、エアフローが比較的良好な下段のグラフィックスカードでは、GPUの温度は70℃前後、ファンの回転数も1,000rpm前後までしか上がらずまだ十分に余力が残されている。一方、エアフローが極端に悪い上段のグラフィックスカードでは、Fan 1が2,700rpm弱、Fan 2は3,400rpm弱まで上昇する。しかし、GPUの温度は最高83℃で頭打ちとなり、冷却性能については全く問題ない。
続いて騒音値を確認すると、単体では高負荷時でも39.5dBAまでしか上がらず静音性は良好。ただし「NVLink SLI」では、上段グラフィックスカードのファンが高速回転するため、ノイズは53dBA強まで上昇している。さすがに風切り音が耳に付き、ケースに入れても完全に抑えることは難しいだろう。ゲームをやる場合には、遮音性の高いヘッドセットを組み合わせるなどの対策をしておきたい。
最後に消費電力をチェックしておこう。起動後10分間何もせず放置した状態をアイドル時、高負荷時は各種ベンチマークテスト実行中の最高値を採用している。
グラフィックスカードが1枚増えるため、アイドル時でも消費電力は30W強上昇する。また高負荷時でも、SLIに非対応の「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION」や「Battle Field V」は、2枚目のグラフィックスカードにほとんど負荷がかからないため、単体時との差は約50Wとあまり大きくない。一方、SLI対応のベンチマークやゲームでは260W~300Wも増加し、最も消費電力の大きい「3DMark」では最高760.6Wを記録。実際の運用では、並列作業によってさらに消費電力が増加する可能性もあることから、電源ユニットは最低でも1,000Wクラス、可能なら1,200Wクラスのものを用意したい。
登場した当初は、ミドルレンジクラスのGPUをアップデートする目的もあり、幅広い製品をサポートしていたNVIDIA SLI。しかし、最近では単体では対応できない高解像度・高リフレッシュレート環境をターゲットにした技術へと方向性が変化し、Pascal世代からはGeForce GTX 1070以上、Turing世代では、遂にGeForce RTX 2080以上のみ対応となるなど、ハードウェアの要求はかなり厳しい。さらにその能力を活かすためには、ソフトウェア(ゲーム)側のサポートも必要で、「NVLink SLI」を使うためのハードルは非常に高いと言わざるを得ない。
しかし、その分ハマれば効果は絶大だ。ソフトウェアやゲームの最適化具合にもよるが、パフォーマンスの上昇率はおおむね単体の約1.7~1.8倍で、ほぼ全てのテストで4K@60fpsをクリア。「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター」や「Battlefield 1」では、100fpsを超えており、これまで4Kや3Kウルトラワイド液晶では難しかった、最高画質かつ高リフレッシュレート環境でも快適なゲームが可能になる。さらに4Kを超える超高解像度環境での運用も十分視野に入ってくるだろう。
そして今回の主役である「GeForce RTX 2080 Ti GAMING X TRIO」に目を向けると、3連ファンクーラー「TRI-FROZR」の高い冷却性能と、高品質なオリジナル基板に支えられ安定性は抜群。アグレッシブのオーバークロックが施されたGeForce RTX 2080 Tiを2枚同時に動かす過酷な環境にもかかわらず、テスト中に不安定な挙動を示すことは一度もなかった。
採算度外視でとにかく現行最高峰のゲーミングPCを求めるなら、「GeForce RTX 2080 Ti GAMING X TRIO」の「NVLink SLI」にぜひ挑戦してみて欲しい。これまでのPCとは一線を画す異次元の性能を体験することができるはずだ。
協力:エムエスアイコンピュータージャパン株式会社