エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.753
2019.07.07 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹
最後に消費電力の違いを確認していこう。起動直後10分間何もせず放置した際の最低値をアイドル時、「CINEBENCH R15/20」実行時の最大値を高負荷時に設定。“Wattup Pro”を使用して消費電力を計測している。
まずアイドル時のスコアを確認すると、第3世代Ryzenシリーズはコアクロックが3.0GHz前後までしか下がらないこともあり、Core i9-9900Kに比べると10W強高くなった。その分、負荷の軽い作業でも軽快に動作するというメリットはあるものの、アイドル時の消費電力については今後さらなる改良を望みたい。
一方、高負荷時のスコアを確認するとTDP65WのRyzen 7 3700Xで約91W、TDP105WのRyzen 9 3900Xでも約17Wも低く、最新アーキテクチャの恩恵は大きい。特にコア数で4コア(8スレッド)も上回るRyzen 9 3900Xは、Core i9-9900Kを圧倒するマルチスレッド性能を備えており、ワットパフォーマンスも優秀だ。
これまで8コア/16スレッドに留まってきた、メインストリームCPUの壁を遂に打ち破った第3世代Ryzenシリーズ。12コア/24スレッドのRyzen 9 3900Xでは、従来の8コア/16スレッドモデルとの比較で、「CINEBENCH」関連の約5割アップを筆頭に、マルチスレッド関連のベンチマーク全てで上回るなど、その性能はまさに圧巻。Ryzen ThreadripperやCore Xなど、メニーコアに注力した、いわゆるHEDT向けCPUとも十分渡り合うことができる実力を備えていた。
さらにIPCの改善や、拡張命令処理性能の向上に伴い、これまで苦手としていたゲームやシングルスレッドの性能も大幅に向上。Ryzen 9 3900Xはもちろんのこと、価格、消費電力とも1ランク下の位置づけとなるRyzen 7 3700Xでも、Core i9-9900Kに準ずる性能を発揮し、従来モデルの欠点は見事に解消されている。
価格面では、ここ最近Intel CPUがやや値下がり傾向のため、対抗とするモデルより若干高め。しかし、AMDのCPUにはハイエンドモデルを含め、すべての製品に実用的なCPUクーラーが付属する。そして、PCI-Express4.0の利用はできないが、AMD 400/300シリーズといった前世代のマザーボードが流用できることから、コスト面の不利も十分解消できることだろう。
正直、Ryzen 9 3900Xについては、これまでのメインストリーム向けCPUに敵はいない。最大のライバルとなるのは、9月に登場が予定されている16コア/32スレッドのフラッグシップモデルRyzen 9 3950Xということになりそうだ。
協力:日本AMD株式会社