エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.767
2019.08.19 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹
最後に、チューニングユーティリティ「EasyTune」を使った簡単な手動オーバークロックを試してみることにしよう。ベンチマークテストは「CINEBENCH R15」「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ」「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION」の3種類で、すべてのテストが完走できるコアクロックと電圧の組み合わせを探ってみることにした。
Windows上で細かいチューニングが行える「EasyTune」。設定内容は即座に反映されるため、用途に合わせて都度設定を変更できる |
コア電圧を1.35Vの「Static」に設定した状態で、全コア4.35GHzまでは安定動作が可能だった |
コア電圧とCPU倍率のみを設定する簡単なチューニングながら、全コア4.35GHzまでクロックを引き上げることができた。これに伴い「CINEBENCH R15」のマルチコアテストは約7%スコアが向上している。一方、「CINEBENCH R15」のシングルコアやゲームベンチマークなど、シングルスレッド性能が重要なアプリケーション(ゲーム)では、最高4.50GHzからクロックが若干下がったことが影響し、スコアが落ち込んでしまった。
続いて消費電力への影響を確認すると、オーバークロックによってアイドル時は10W強、高負荷時は30W強増加している。もともと消費電力の多いRyzen 9 3900Xということで、電源回路への負荷を心配していたが、テスト中にブルースクリーンが発生することは一度もなく常に安定動作していた。
AMD X570チップセットモデルでは、貴重なMini-ITXマザーボード「X570 I AORUS PRO WIFI」。当然ながら、メモリスロットや拡張スロットなど、拡張性には制限を受ける。さらに電源回路も8フェーズと、カタログスペックだけを見るとATXのミドルレンジ以下で、やや物足りなさを感じるかもしれない。
しかし、最上位モデルと同じダイレクト駆動のデジタル回路設計を取り入れることでフェーズ数の少なさをカバー。またサーバーグレードの高効率MOSFET「Infineon 70A Power Stage」や、高冷却なヒートシンクを組み合わせることで、メインストリーム向け最高峰となるRyzen 9 3900Xのオーバークロックにも耐えられる優れた安定性を実現している。
さらに装甲仕様で固められたスロットや、基板の歪みを防止するバックプレート、最高2.4Gbpsの高速無線LAN「Wi-Fi 6」への対応など、その設計思想は間違いなくハイエンドに通じるものがある。第3世代Ryzenシリーズを使い、超小型かつハイパフォーマンスなPCを組むなら、その選択肢は今のところ「X570 I AORUS PRO WIFI」のほぼ一択になりそうだ。
協力:日本ギガバイト株式会社