エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.782
2019.10.07 更新
文:pepe
ここからはAdobe関連のベンチマークをチェックしてみよう。まずは定番の画像編集ツール「Adobe Photoshop CC」の性能を把握できる、スクリプトベンチマーク「Puget Systems Adobe Photoshop CC Benchmark」を用意した。
最初にこのベンチマークテストのスコアが意味するところを説明しよう。1,800万画素のRAWデータ画像の展開、回転、リサイズ、保存といった一般的な処理は「General Score」。Camera Rawフィルター、ノイズ除去、各種ブラー処理は「Filter Score」。グラフィックスカードの処理性能が最も影響するタスクであるリサイズ、ぼかし、チルトシフトブラー、アイリスブラーは「GPU Score」。さらにRAWデータのパノラマ合成は「Photomerge Score」として、それぞれ数値として反映される。各テストは3回ずつ実行され、それらをまとめて算出したスコアが「Overall Basic Score」だ。
また基準となるリファレンスには、CPUにIntel Core i9-9900K、グラフィックスカードにNVIDIA GeForce RTX 2080 8GB、メインメモリが64GB、ストレージにSamsung 960 Pro 1TB、OSにWindows 10を搭載したPCのスコアを採用。現行のメインストリーム向けでは最高峰のシステムと比較してみることにした。
一般的な処理性能の指標となる「General Score」で87.1、負荷が高いとされる「ノイズ除去」、「ブラー処理」、「広角補正フィルター」などの「Filter Score」で87.1、「パノラマ合成」などを行う「Photomerge Score」で95.5を記録している。リファレンスシステムとの比較にはなってしまうが、CPUのグレードや搭載しているメインメモリの量を踏まえると十二分な性能を発揮、「Adobe Photoshop CC」で快適な処理を実行できる。
続いてプロフェッショナル向けの映像編集ツール「Adobe Premiere Pro」の処理性能を確認しよう。使用するベンチマークは、同じくPuget Systemsが公開する「Puget Systems Adobe Premiere Pro CC Benchmark」だ。なお、本ベンチマークはベータ版であるため、実行される環境等の違いでスコアが左右されるため参考程度としてほしい。
このベンチマークでは、4K解像度、59.94フレームのH.264、ProRes422、REDのメディアを使い、「Lumetri Color」によるカラーグレーディングと、「MultiCam」を使用した4トラックから成る全12クリップのシーケンスの再生をテストする「Standard Live Playback Score」、メディアを出力保存する「Standard Export Score」、その他CPUおよびGPUによる個別処理を実行し、それらの結果をもとに算出されたスコアを「Overall Standard Score」としている。
なお参考となるサンプルには、CPUにRyzen 9 3900X、グラフィックスカードにRadeon RX 5700 XT、メインメモリ64GBを搭載したシステムのスコアを採用している。
メディアを変換して出力保存する「Standard Export Score」スコアについては、純粋にコア数やスレッド数の多いCPUが有利となり、Ryzen 7 3700X はRyzen 9 3900X の7割程度になっているが、「Adobe Premiere Pro CC」も基本はシングルコア性能に依存しやすいアプリケーションのため、「Standard Live Playback Score」スコアについては比較的差が無い。また今回のテストに限って言えばメモリ容量もさほど影響を受けておらず、メインメモリ16GBでは少なすぎる、ということは無い印象だ。
プロフェッショナル向けのモーショングラフィックスツール「Adobe After Effects」の性能についてもチェックしておこう。計測には「Puget Systems Adobe After Effects CC Benchmark」を使用し、性能を数値化している。なお、このベンチマークはベータ版につき、環境等の違いでスコアが左右されるため、参考程度としてほしい。
このベンチマークでは、コンポジションのレンダリングを行う「Render Score」、レンダリングを行わないRAMプレビュー「Preview Score」、3D Camera Trackerの解析処理を行う「Tracking Score」に加え、それらをまとめて算出したスコアが「Overall Score」として計測される。なお、基準となるリファレンススコアは、「Puget Systems Adobe Photoshop CC Benchmark」と同じだ。
「Adobe After Effects」グラフィックスカードによるスコア差は限定的で、よほど世代が古くない限りVRAMを6GB以上搭載していれば影響が少ない。また、マルチスレッド処理に最適化されていないため、8コアを超えるCPUではスコアが上がりきらない可能性があり、実際のプレビューや解析処理ではシングルコア性能が大きく影響する。「Render Score」で86、「Preview Score」で85.9、「Tracking Score」で94.2を記録、換算スコアとなる「Overall Score」は887となった。今回のテストではCore i9-9900Kにメインメモリ128GBを搭載するマシンをリファレンスとしているため参考程度の比較になってしまうが、その中でも「Tracking Score」で健闘しているのがわかる。
「Adobe After Effects」ではおなじみの3D Camera Trackerによる自動解析処理は、例えばベースとなる背景映像に3Dオブジェクトを合成する際に、違和感無くモーションを同期させることができ、CMやPVなどあらゆる映像制作で欠かせない合成技術である。そういった高度な解析にも強い処理性能を持っていることが分かる。
Adobe系のアプリケーションにおいて、AMDの第1世代Zenアーキテクチャー、および第2世代で採用されていたZen+アーキテクチャーではコア数の多さで強引に処理していたタスクも、Zen2アーキテクチャーを採用した第3世代では、シングルコア性能と最適化が飛躍的に進み、従来のRyzenとは別次元の性能を発揮、Adobe系ベンチマークでもその優秀な処理性能を垣間見ることができる。