エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.803
2019.12.02 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹/撮影:松枝 清顕
「Ryzen Master」に実装されている「Auto Overclocking」を使い、どの程度性能が変わるのかチェックしてみることにした |
テストセッションのラストは「Ryzen Master」に実装されている「Auto Overclocking」を使い、Ryzen 9 3950Xの自動オーバークロックを試してみることにしよう。使用するベンチマークは「CINEBENCH R15」「CINEBENCH R20」「ファイナルファンタジーXIV 漆黒のヴィランズ」「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION」の4種類。さらにストレステストとして、「OCCT 5.4.2:CPU:OCCT」を30分間実行した際の16コアの平均動作クロックの推移と、電源回路のサーモグラフィーの結果も確認してみることにした。
まず純粋なCPU性能を図る「CINEBENCH」系の結果を確認すると、シングルコアテストはいずれのベンチマークでもスコアに違いはなし。マルチコアテストは「CINEBENCH R15」で約3%、「CINEBENCH R20」で約2%上昇し、「Auto Overclocking」ではマルチスレッド処理時のクロックを引き上げる効果があるようだ。
続いてグラフィックス系のベンチマークを確認すると「ファイナルファンタジーXIV 漆黒のヴィランズ」では、いずれもその差は1%未満で誤差の範囲。「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION」でも4Kでは約1%の差がついているが、フルHDでは誤差の範囲。やはりシングルスレッドが重要な処理ではあまり大きな違いはないようだ。
消費電力を確認すると、グラフィックス関連の2つのベンチマークでは、最大でも20Wと微増。一方CPU関連の「CINEBENCH」では、約90Wと大幅に消費電力が増加している。「ROG Crosshair VIII Impact」の堅牢な電源回路と強力な冷却システムのおかげで、今回は特にテスト中に不安定になることはなかったが、Ryzen 9 3950Xで「Auto Overclocking」を有効にする場合は、電源回路がしっかりとしたマザーボードを選択する必要がある。
標準:高負荷時のサーモグラフィー結果 | 「Auto Overclocking」:高負荷時のサーモグラフィー結果 |
最後にストレステスト「OCCT 5.4.2」実行時のクロック推移を確認すると、最高クロックの差は約25MHzとごくわずか。ただし、クロックのブレが小さくなり、下限も約50MHz底上げされている。動画のエンコードやレンダリングなど、重い処理を長時間行う場合には有効にしてみるといいだろう。また電源回路のサーモグラフィーを確認すると、標準と「Auto Overclocking」でほとんど差がなく、デュアルファンを搭載したヒートシンクの冷却性能にはまだ余力が残されているようだ。
厳選したパーツによる堅牢な10フェーズデジタル電源回路を備え、Ryzen 9 3950Xの定格運用はもちろん、消費電力が大幅に増加する自動オーバークロックでも安定動作を可能にした「ROG Crosshair VIII Impact」。デュアルファンによるアクティブヒートシンクも強力で、未だ冷却性能に余力を残している。このことから、手動によるかなりピーキーなチューニングにも十分耐えてくれることだろう。
さらに若干だが余裕のできた基板スペースと、ドーターカード設計により他社のMini-ITXマザーボードとは一線を画す機能と拡張性を実現。正直、メモリスロットや拡張スロットなど、Mini-ITX(DTX)特有の制限を除けば、ATXフォームファクタのハイエンドモデルと比較しても全く遜色がない。
Ryzen 9 3950Xを使用する場合、最大のネックになるのはおそらくCPUの推奨環境に謳われている280mmサイズ以上のラジエターだろう。ただし「Eco Mode」をうまく活用すれば問題なく回避できる |
対応するケースについても、現行のMini-ITXケースであればほぼ全て対応可能。マルチスレッド、シングルスレッドともに現行最高峰の第3世代Ryzenシリーズを使えば、最強のコンパクトゲーミングPCを作り上げることができるだろう。また、どうしてもMini-ITXケースばかりに目が行きがちだが、AMD X570チップセットを搭載したマザーボードでは、今のところハイエンドクラスのMicroATXモデルは皆無。ミニタワーPCケースとの組み合わせでも、大いに力を発揮してくれそうだ。
協力:ASUS JAPAN株式会社