エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.827
2020.02.07 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹/撮影:松枝 清顕
ベンチマークテストの最後は消費電力を確認していこう。今回は起動直後10分間何もせず放置した際の最低値をアイドル時、「CINEBENCH R15/20」実行時の最大値を高負荷時として計測を行った。
CPUが中心の処理ながら440Wを超える消費電力は、かなりインパクトのある数字。ただし、Ryzen Threadripper 2990WXからコア数は2倍。さらにマルチスレッド性能では3倍近いものもあることを考えれば、80W強でよく抑えられているというのが率直な感想だ。Ryzen Threadripper 3990Xに使われているコアは、「Zen 2」の中でも選別された特に優秀なものであることが推測できる。またテスト中のCPU温度は、最高でも70℃前後で頭打ち。第2世代Ryzen Threadripperの「WX」シリーズに対応するCPUクーラーなら、問題なく流用できるだろう。
コンシューマ向けCPUでは初めて64コア/128スレッドを実現したRyzen Threadripper 3990X。マルチスレッド処理については、Ryzen 9 3950Xはもちろん、先代の最上位モデルであるRyzen Threadripper 2990WXをも完全に置き去りにする圧巻のパフォーマンスを発揮する。
また第2世代Ryzen Threadripperはハマれば高速だが、「V-Ray Benchmark」や「Sandra 20/20:マルチメディア処理」など、苦手な処理が存在し、やや癖のあるCPUだった。しかし、Ryzen Threadripper 3990Xでは、メニーコアへの最適化が進んでいるようで、マルチスレッドに対応したソフトウェアなら安定した性能が期待できるのも大きな魅力だ。
そして、これまでHEDT CPUの共通の問題点であったシングルスレッド性能も大きく改善された。さすがにメインストリームの最高峰であるRyzen 9 3950Xには追いつけないが、Ryzen 7 3700Xクラスであれば十分に渡り合うことができるレベル。生粋のゲーマーがRyzen Threadripper 3990Xを選ぶことはないだろうが、クリエイター作業が中心で、ゲームも嗜むユーザーなら、これまでのようにクリエイターPCとゲームPCを分ける必要はなくなった。
税込で約50万円という価格や、CPU処理だけで400Wを遥かに超える消費電力は、正直コンシューマ向けの範囲を逸脱している。しかし、そのパフォーマンスを実際に体感してしまうと、そういったことを論じるのは野暮に感じてしまう。名実ともに、最高峰のCPUが欲しいならRyzen Threadripper 3990X一択だ。
協力:日本AMD株式会社