エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.831
2020.02.17 更新
文:撮影/松野 将太
続いて、写真編集と動画編集に関わるテストも試してみよう。まずは鉄板の写真編集アプリ「Lightroom Classic CC」で、299枚のNEFファイル(7,360×4,912ドット、容量12.5GB)を最高画質のJPEG画像に書き出すまでの時間を計測した。
結果は複数回計測しているが、ここでは「Ryzen 5 3500」が2分近く早い値を叩き出した。おそらくキャッシュ容量の大きさが効いているためだと思うが、これだけの速度差が出ると、無視できない結果と言えるだろう。
動画編集ソフト「Premiere Pro CC」での動画書き出し時間はどうだろうか。再生時間7分41秒(容量2.49GB)の4K動画を、H.265(HEVC)、解像度フルHDのMP4ファイルとして書き出すまでの時間を計測した。
いずれもGPUアクセラレーション有効状態で約10分の時間がかかり、その差は約10秒ほど。CPUとGPUで作業が振り分けられることもあり、「Lightroom Classic CC」のように大きな差はつかなかった。
セッションの締めくくりとして、システムの消費電力とCPU温度をチェックしておこう。まずは消費電力を確認する。テスト方法は、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ」を動作させた際の最高値を高負荷時、起動後10分間何もせず放置した状態をアイドル時として採用し、計測はワットチェッカーで行っている。
プラットフォームが異なるため、システムは極力同じパーツを使用しているが、アイドル時の消費電力には10Wほどの差が出た。高負荷時に関しても、「Core i5-9400F」がギリギリ300Wを超えなかったのに対し、「Ryzen 5 3500」は320Wをオーバー。とはいえ、この程度に納まるのであれば気になるほどの差ではない。
続いて、CPUの温度を見てみよう。起動後10分間何もせず放置した状態をアイドル時とし、高負荷時は「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ」実行時と「CINEBENCH R15」実行時の2パターンの値を「HWiNFO 64」で取得している。なお、Intel環境ではAMD製CPUのように「Tdie」の値を読み取れず、厳密な比較ができないため、参考までにパッケージ温度を記載している。
特に「CINEBENCH R15」を回している最中の温度は80℃をオーバーしており、やや気になるところだ。手軽なリテールクーラーである「Wraith Stealth」でも基本的には問題ないのだが、AMD純正クーラーでも下位に位置するモデルであり、冷却性能は決して高いわけではない。CPUを酷使するような活用を考えているのであれば、数千円程度の別売CPUクーラーを導入し、冷却性能の向上を狙おう。
ここまでテストしてみた限り、「Ryzen 5 3500」は競合のCPUに負けずとも劣らないポテンシャルを備えており、6コア/6スレッドのミドルクラスにおける新たな選択肢となり得そうだ。2月22日の発売時点での市場想定価格は14,680円前後(税別)で、税込み価格は16,148円となる見込み。直接の競合製品として取り上げられているIntelの「Core i5-9400F」の実売価格は、原稿執筆時点で17,780円前後のため、「Ryzen 5 3500」が約1,600円安い計算になる。価格競争力も文句なしだろう。
特に、競合の同クラスCPUに対しておよそ2倍のキャッシュ容量を備えるのはポイントで、キャッシュが効く場面ではその実力を存分に発揮できる。直近でラインナップに追加された第3世代Ryzen上位モデル「Ryzen 9 3950X」のような扱う上でのハードルの高さもなく、エントリーゲーミングPCやコストパフォーマンスを重視したPCなどに広くすすめられるCPUと言える。現行のミドルクラスCPU市場に大きな影響を与えそうな本製品、今から発売が楽しみだ。
協力:日本AMD株式会社