エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.839
2020.03.09 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹/撮影:松枝 清顕
TDP 65WのRyzen 5 3600に対しては十分な冷却性能を発揮した「NH-L9a-AM4 chromax.black」。続いて、互換性ページでは、「動作可能だが持続クロックがベースクロックを下回る」(Possible but sustained clock speed will be below base clock)と制限付きの対応となるRyzen 9 3900X(12コア/24スレッド/定格3.80GHz/ブースト最大4.60GHz/L2キャッシュ6MB/L3キャッシュ64MB/TDP105W)でも冷却性能をチェックしておこう。なお比較対象として、リテールクーラー「Wraith Prism with RGB LED」を使用した状態でも計測を実施した。
「NH-L9a-AM4 chromax.black」では制限付きの対応となるRyzen 9 3900Xだが、実際にどの程度クロックが低下するのか確認していこう |
省電力機能によって、コアクロック、コア電圧とも大きく引き下げられるアイドル時は、クーラーによる違いはほとんどなかった。また高負荷時の結果を確認すると、「Wraith Prism with RGB LED」は82℃前後でほぼ安定して推移。一方「NH-L9a-AM4 chromax.black」では、冷却性能が不足するため、テスト開始1分ほどでTjunctionの95℃まで上昇する。その後は、クロックや電圧を自動的に調整して80℃前半まで温度が下がり、また95℃まで上昇すると調整が繰り返される結果となった。
続いてCPUクロックを確認すると「NH-L9a-AM4 chromax.black」と「Wraith Prism with RGB LED」の差は、おおむね100~125MHzの間。Noctuaが指摘している通り、クロックは低下するもののその差は3%と小さく、パフォーマンスへの影響は思ったほど大きくない。
Eco Mode(PPT 65W) |
ちなみに「Ryzen Master」の「Eco Mode」機能を使い、PPTを65Wに設定したところ動作クロックは3,750~3,800MHz前後まで落ち込むものの、CPUの温度が80℃を超えることはなくなった。動画のエンコードや、3Dレンダリングなど、マルチスレッド性能が重要なアプリケーションを使うなら、「Eco Mode」でPPTを制限して運用するのもアリだ。
続いてファンの回転数と騒音値をチェックしておこう。「NH-L9a-AM4 chromax.black」は、アイドル時が1,800rpm前後、高負荷時でも2,500rpm前後で推移するのに対して、「Wraith Prism with RGB LED」は、アイドル時でも2,400rpm前後、高負荷時には3,750rpm前後まで回転数が上昇する。騒音値もアイドル時で3.8dBA、高負荷時には13.2dBAも上昇してその差は歴然。実際テスト中のノイズも「NH-L9a-AM4 chromax.black」は耳障りに感じることはなかったが、「Wraith Prism with RGB LED」は正直常用がためらわれるほどだった。
ロープロファイルCPUクーラーでは、不足しがちな冷却性能を補うため高回転の冷却ファンを組み合わせているものが少なくない。その結果、冷却性能は満足いくものだったとしても、“うるさすぎて常用できなかった”というのは、小型PCファンにはありがちな失敗談だろう。
しかし、そこは空冷最強ブランドを謳うNoctua。Socket AM4対応(および専用)モデルでは最薄クラスとなる「NH-L9a-AM4 chromax.black」だが、標準でもノイズレベルは40dBA以下。「L.N.A.」使用時ならほぼ無音に近いレベルながら、6コア/12スレッドのRyzen 5 3600に対応する冷却性能を発揮。もちろんメモリスロットや、拡張スロットとの干渉もなく、Mini-ITXマザーボードの機能を完全に使い切ることができる。
さすがにTDP 105WのRyzen 9 3900Xはそのままでは荷が重いが、こちらも「Eco Mode」での運用や、若干のパフォーマンス低下を受け入れることができるなら十分検討の余地がある。特にマルチスレッド処理が重要なアプリケーションでは、クロックが低下するデメリットを受け入れても導入する価値はあるだろう。
小型・静音・ハイパフォーマンスなPCを検討しているユーザーには、「NH-L9a-AM4 chromax.black」は国内発売が待ち遠しい製品になりそうだ。
協力:RASCOM Computerdistribution(Noctua)