エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.841
2020.03.18 更新
文:撮影・エルミタージュ秋葉原編集部 松枝 清顕
組み込みセッションの最後に、ストレージを搭載してみたい。オープンフレーム型PCケースは、いわゆるベンチ台と同じく、組み込みを行う手順は比較的自由。自作PCに手慣れた読者なら、マニュアルには軽く目を通す程度で作業を進めてしまうだろう。しかし1点だけ「ALICE」特有のルールがあった。それがストレージの搭載手順だ。
ストレージは、下段のSECC製プレートに搭載スペースを集約。最大で2.5インチSSDが3台、3.5インチHDDが1台収納できるワケだが、いずれも固定方法は背面からのネジ留め式が採用されている。ここで注意しなければならないのが、電源ユニットにネジ穴が隠れてしまうため、SSDおよびHDDを先に固定する必要があること。さらにフロント寄りの2.5インチSSDは、背中合わせに3.5インチHDDがマウントされる。つまり3.5インチHDDを先に固定すると、背面の2.5インチSSDのネジ穴が塞がれてしまい、後から搭載ができなくなってしまうのだ。
いずれも確認を怠らなければ目視で分かる程度の事だが、事前に知っておかなければ面倒な事になる。
何を隠そう、筆者は固定した電源ユニットと3.5インチHDDいずれも一旦取り外している。こんな面倒を起こさないためには、マニュアルはもとより、「速攻撮って出しレビュー」を熟読する必要がありそうだ |
3.5インチHDDは電源ユニットとスペースを分け合う関係にある。なお奥行き160mmも電源ユニットに対し、3.5インチHDDまでの距離は実測で約80mm程度だった |
2.5インチSSD、3.5インチHDD共に下段のSECC製プレートにネジ留めで固定を行う。なおコネクタは上方向に向けて搭載する事になる |
組み込みセッションの最後は、ボトム面に冷却ファンを増設してみる事にした。せっかくの空きスペース。最大数3基の120mmファンを搭載すれば、PCケース内部に大きな風の流れができる。煙突構造がもたらす最大限のエアフローは、長い目で見ればシステムの寿命を延ばす効果はあるはずだ。
そして、LEDファンのイルミネーション効果も忘れてはいけない。PCパーツを組み上げると、外周にポリエステル製カバーを被せて完成と相成る。実は強化ガラスほどのインパクトはないものの、内部構成パーツのLED発光をカバー越しに楽しむ事ができるのだ。とは言え、輝度の高いイルミネーションでも”行灯(あんどん)”のような風情のある”見映え”に留められる事は付け加えておこう。
ボトム面に増設した3基の120mmファン。固定は底面から行い、一般的なテーパーネジで事が足りる。エアフロー能力の向上と、イルミネーションをポリエステル製カバー越しに楽しむ点に、冷却ファン増設の意味がある |
ポリエステル製カバーについても解説しておこう。折り畳んだ状態のカバーを広げると、メッシュ地と周囲にゴムが縫い合わされた4箇所の穴、そしてもう片方にはぐるりとゴムが縫い込まれていた。4箇所の穴は台座(インシュレーター)の露出用で、メッシュ地はボトム面の通気性を確保するためのもの。つまり、もう一方はトップ面となり、本体にはズボンを履かせるように、底面からカバーを装着していく事になる。
組み込みが完成した本体に、ポリエステル製カバーをボトム面から”履かせていく”。底の部分はメッシュ仕様で、4つの台座はしっかりと露出できるようにできている |
トップカバーを外した状態で、トップ部にもゴムでしっかりとカバーを固定。なおポリエステル製カバー自体はブカブカというよりもピチピチ。履かせていくうちにねじれてしまう事があるため、多少は手間取るかもしれない |
まったくどんな製品なのか分からず、手探りで始めた今回の検証。ともすればイロモノに見られがちなプロダクトだが、骨格部分はオープンフレーム型PCケースであり、思いの外よくできている。ABS樹脂を主素材とした枠はユニークだが、それなりに剛性もあり、構成パーツを組み上げた状態でも歪み等は感じられなかった。骨格もさることながら、2枚のSECC製プレートが補強板の役割を上手に果たしているようだ。
ここまでくると、単なるABS樹脂製オープンフレーム型PCケースとしても十分と思えたが、例のポリエステル製カバーはIn Winの遊び心。ショー向けのコンセプトモデルに留めず、量産モデルに仕立て上げるだけの底力を感じさせる1台でもあった。
さてポリエステル製カバーを履かせてみたところ、出来の良いABS樹脂製フレームや大枚をはたいて購入した自慢のPCパーツがまるで見えなくなる。「なんてことをしてくれるのだ」と思う反面、コンセプトが”「不思議の国のアリス」の世界観にインスパイアされた冒険心あふれる製品”である事を思い出す。なるほど、In Winの世界観がカタチとなり、ユニークでちょっと奇妙なPCケース。それが「ALICE」なのだ。
協力:In Win Development
株式会社アユート