エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.859
2020.04.27 更新
文:/撮影・pepe
1ms(MPRT)の応答速度を誇る「AORUS FI27Q-P」では、オーバードライブの設定を変更することができる。デフォルトは「Balance」に設定されているが、「Picture」/「Balance」/「Speed」とした際の違いを「Blur Busters UFO Motion Test」で確認する。その際の映像は、先ほど同様にデジタルスチルカメラのスーパースローモーションで直接撮影した。
「Picture」と「Balance」のオーバードライブ設定で大きな差は出ないが、一番右端の「Speed」では明らかに残像感が抑制されていることが分かる。オーバードライブを有効にすると、画質が下がることもありトレードオフの要素も懸念されるが、今回のテストではそうした現象も確認できず良好な結果と言える。
モーションブラーを軽減しFPSゲームなどの照準を合わせやすくする「Aim Stabilizer」の効果を確認していく。応答速度を高める「オーバードライブ」とは異なり、バックライトの強制点滅で黒フレームを意図的に挿入し、物理的に画面を暗転させることで残像を低減させるものだ。テストではリフレッシュレートを165Hzに設定し、「Blur Busters UFO Motion Test」で確認。先ほど同様にデジタルスチルカメラのスーパースローモーションで直接撮影している。
実際に「Aim Stabilizer」を有効にすると、黒フレームではなく赤フレームが確認できる。また赤フレームの後に強いシアン色が表示されていることが分かる。「Aim Stabilizer」の赤フレームにより残像部分が見えにくくなり、結果として残像が減っていると体感できるだろう。この効果は一瞬のため、肉眼で赤フレームはもとより“赤っぽい”や“シアンっぽい”といった印象は全くないが、時間平均の画面輝度が低下してしまうため、輝度は下がる。憶測ではあるが、完全にブラックアウトする黒フレームではなく、赤フレームを挿入することで輝度の低下を抑制しているのかもしれない。ただし「Aim Stabilizer」は、ディスプレイ同期とは排他利用となるため注意が必要だ。
最後にGIGABYTE独自の「Black Equalizer 2.0」による、暗部視認性の効果を確認しよう。テストにはレースゲーム「Assetto Corsa」のリプレイを使用し、「Black Equalizer 2.0」をデフォルトである「0」「1」「2」「3」としてデジタルスチルカメラのスーパースローモーションにより画面を直接撮影している。
デフォルト値「0」を基準に値を上げていくと、明らかに暗部の視認性が向上しているのが分かるだろう。もともと明るい部分は変化なく白飛びも発生していないが、値を「3」にすると全体的にコントラストが下がりのっぺりした印象となる。個人的な好みやタイトルで左右される要素ではあるが、今回のテストではボディ下部や足回り部分のディテールがはっきりとして良好な結果となった。
従来のブラックイコライザーや、ブラックレベル等の名称がつく暗部調整機能は、画面全体の黒レベルを一律で調整するため、調整する必要ない明るい部分が白飛びしてしまうデメリットもあった。しかし「Black Equalizer 2.0」では、画面上を1,296個のエリアに分割。そのエリアをリアルタイム調整することで、白飛びを抑えて暗部の黒レベルを上げ、全体的なクオリティを維持したまま視認性を高めることに成功している。
27インチでFHD(1,920×1,080ドット)解像度やリフレッシュレート120Hzまでの要求であれば、その選択筋はかなり広く手頃な製品も多く存在する。その中で「AORUS FI27Q-P」は、WQHD(2,560×1,440ドット)解像度とすることで109ppiの画素密度で高精細に表示。リフレッシュレート165Hz、応答速度1ms、IPS方式のパネルに加え、10bit(8bit+FRC)や、DCI-P3を95%カバーする広色域表示、「DisplayHDR 400」などにも対応する。さらにDisplayPort ver1.4(HBR3)への対応はゲーミングの枠に収まらず、画像や映像処理などのデジタルコンテンツを扱うユーザーにも最適と言えるだろう。
さらにOSDをデスクトップアプリとして操作する「AORUS OSD SIDEKICK」が極めて便利だ。一度に表示可能な項目数の制限や、階層をたどらなければ目的の項目を操作できないOSDよりも使い勝手が良好。実際の環境に合わせて輝度やコントラスト、彩度の調整などを行う際に何度もOSDメニューを往復することは無い。
バージョンアップされた黒レベル補正「Black Equalizer 2.0」では、1,296分割されたエリアをリアルタイム制御することで、有用であるとされつつもクオリティに満足できなかった今までの黒レベル補正機能とは一線を画し、暗部に集中した黒レベル補正は多くのゲーミングタイトルでその効果を発揮するだろう。GIGABYTEが呼称する“戦術的ディスプレイ”として、独自の進化を遂げる「AORUS」シリーズから、今後も目を離せない。
協力:日本ギガバイト株式会社