エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.890
2020.07.16 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 絵踏 一/撮影:松枝 清顕
ARCHISS「Quattro TKL」シリーズ 市場想定売価税込17,000~19,000円前後(2020年7月16日発売) |
ほんの小さな一点にも関わらず、圧倒的な存在感。決して万人受けする装置ではないものの、愛好家にとっては必須の機能。アーキサイトのARCHISSブランドから新たにリリースされた、「Quattro TKL」シリーズ最大の特徴であるポインティングスティックのことだ。
一般的には、このデバイスの元祖的存在である、「ThinkPad」シリーズのトラックポイント(TrackPoint)を連想する人が多いだろう。キーボードにマウス機能を統合するポインティングデバイスの一つで、ホームポジションから手を離すことなくマウスカーソルを操作できるという、巨大なメリットがある。その優れた使い勝手と独特の操作感から、愛好家たちの熱烈な支持を獲得してきた装置だ。
この丸いのが好きなんだ!という愛好家に朗報。メカニカルキーボードにポインティングスティックを組み込んだ、素敵な新モデルが登場した |
もっともその成立の過程から、ノートPCに組み込まれる例がほとんどであり、デスクトップ向けキーボードの搭載モデルは少ない。ましてそれを搭載したメカニカルキーボードとなれば、およそ「Quattro TKL」が唯一無二の存在だろう。
ちなみにメーカーのアーキサイトによれば、実のところ製品のコンセプトは、10年ほど前から構想していたらしい。しかしキモとなるポインティングスティックのモジュール探しに難航。先ごろようやく、仕様や条件に合うモジュールを手がける国内メーカーにめぐりあい、製品化が実現したとか。こうしてサンプルがデスクに届くまでには、だいぶ長い道のりがあったというワケだ。
前置きがやや長くなってしまったが、まずは「Quattro TKL」の製品概要からチェックしていこう。その名の通りテンキーを省いたテンキーレス(TKL)デザインのキーボードで、レイアウトはスタンダードな日本語91キー配列と英語89キー配列の2パターン。キースイッチには、メカニカルスイッチの金字塔であるCHERRY MXスイッチが採用された。
なお、シリーズにはCHERRY MX茶軸/青軸/赤軸/静音赤軸のバリエーションがあり、2つの配列を合わせ、合計で8モデルをラインナップする。
ミニマルかつスタイリッシュなデザインのパッケージ。サイズは一般的なテンキーレスのメカニカルキーボードと変わらない |
ポインティングスティックをはじめ、主要な特徴を網羅したパッケージ背面。内部には、キーボード本体と付属品が丁寧に収まっている |
最大のトピックは、前述の通りメカニカルキーボードにポインティングスティックを融合させた点だ。高感度な静電容量式のモジュールが採用されており、マウスボタンもスペースキー左右に実装されている。このマウスボタンは、日本語配列と英語配列でやや仕様が異なるのだが、詳細は後ほど確認しよう。
そのほか、同時押し機能は6キーロールオーバーとNキーロールオーバーをハードウェアで切り替え可能。底面にはDIPスイッチを備え、特定キーのスワップを設定できる。
スタンダードながら、入力デバイスとして高水準な機能が詰め込まれているという印象。1.5mmの肉厚キーキャップの印字には、摩耗に強い昇華印刷が採用されるなど、惜しげもなくコストがかけられている。