エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.894
2020.07.30 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹
グラフィックス系ベンチマークのラストは、MMO RPGの最新アップデート版「ファイナルファンタジーXIV: 漆⿊のヴィランズ」公式ベンチマークテストで締めくくろう。なお今回は内蔵グラフィックスということを考慮して、解像度は1,920×1,080ドットに固定し、画質設定は「最高品質」「高品質(デスクトップPC)」「標準品質(デスクトップPC)」の3種類を選択した。
「標準品質(デスクトップPC)」はいずれも「とても快適」判定で、動作に問題なし。さらに「高品質(デスクトップPC)」でもRyzen 7 PRO 4750Gなら「快適」判定を獲得。さすがに「最高品質」は「やや快適」判定まで落ち込むため荷が重いものの、フルHD解像度までなら、画質を調整すれば十分ゲームを楽しめる。
またCore i9-9900Kは、Ryzen 3 PRO 4350Gとの比較でも「標準品質(デスクトップPC)」で約1.7倍、より処理が重くなる「最高品質」や「高品質(デスクトップPC)」では約2倍もの差がつきその差は歴然。ここまでの結果を見る限り、同じ内蔵グラフィックスでも、AMDはゲームもある程度想定しているのに対して、Intelでは基本的にオフィスワークを前提にしており、想定している利用方法に大きな違いがある。
最後に消費電力をチェックしていこう。アイドル時は起動直後10分間放置した際の最低値を、高負荷時は「CINNEBENCH 20」および「ファイナルファンタジーXIV: 漆⿊のヴィランズ」実行時の最高値をそれぞれ採用している。
アイドル時の消費電力は、Ryzen PRO 4000シリーズがいずれも約45Wで横並びなのに対し、Core i9-9900Kは34.7Wで最も低く、省電力機能についてはいまだIntelが強い。
また高負荷時は、いずれもTDPが65Wに設定されている「Ryzen PRO 4000」シリーズだが、「ファイナルファンタジーXIV︓漆⿊のヴィランズ」では約5Wずつ、「CINEBENCH R20」では約30Wずつ増加しており、その差は以外に大きい。とは言え、最も消費電力の多いRyzen 7 PRO 4750Gでも最高値は156.1Wで、ATXやSFX電源はもちろん、スリム型PCケースなどに標準装備されているTFX電源でも、電力が不足することはないだろう。
ちなみにCore i9-9900Kの消費電力は「ファイナルファンタジーXIV︓漆⿊のヴィランズ」でも184.1W、「CINEBENCH R20」では268.1Wまで増加。ワットパフォーマンスではGPUはもちろん、CPUでもRyzen 7 PRO 4750Gには全く対抗できない。
メインストリーム向けCPUのメニーコア化が進んでいることもあり、マルチスレッド性能で見劣りするようになっていたAMDのAPU。しかし「Ryzen PRO 4000」シリーズでは、IPCが大きく向上した「Zen 2」アーキテクチャの採用に加え、コア数も最高8コア/16スレッドへと倍増したことで、この欠点は完全に解消された。
特に最上位モデルであるRyzen 7 PRO 4750Gについては、Core i9-9900K(およびCore i7-10700K)とも十分に渡り合うことができ、よほどヘビーな運用でないかぎり、CPU性能に不満が出ることはないはずだ。
CPU/GPUとも高性能な割に消費電力は控えめなRyzen PRO 4000シリーズ。Mini-ITXケースや、スリム型PCケースに標準装備されている電源ユニットでも容量が不足する心配はないだろう |
またコア数の削減により懸念していたGPU性能についても、大幅なクロックアップによってパフォーマンスは向上。フルHD解像度までなら、画質調整次第で多くのゲームが快適にプレイできるレベルで、Radeon RX 550やGeForce GT 1030クラスのエントリーグラフィックスカードは完全に不要になった。
「Zen 2」アーキテクチャを採用しながらPCI-Express4.0に非対応な点は残念だが、それ以外については正直欠点が見当たらない。拡張スロットのないMini-ITXケースや、拡張スロットがロープロファイルに制限されるスリム型PCケースでPCを組む場合には、最有力候補になるプロセッサだ。