エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.901
2020.08.16 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹/撮影:松枝 清顕
AMD B550チップセットではもちろん、Socket AM4の中でもトップクラスの電源回路を備える「B550 Taichi」。当然ながら、オーバークロックでの運用を検討している人もいることだろう。そこで、テストセッションのラストは「インタラクティブUEFI」からCPUコアクロックと、コア電圧のみを調整する簡易オーバークロックを試していこう。なおベンチマークテストには「CINEBENCH R15」「CINEBENCH R20」「3DMark」を使用した。
コア電圧1.450V、コアクロック4.30GHzまではWindowsの起動だけでなく、ベンチマークも問題なく動作した |
マルチスレッド処理テストでチェックをしたところ、クロックが下がるようなこともなかった |
CPUコアクロック4.50GHz、コア電圧1.450VでもOSの起動は可能だが、ベンチマークはいずれも完走することができなかった。そこで、CPUクロックを徐々に下げていったところ4.30GHzなら、OSの起動だけでなくすべてのベンチマークを完走させることができた。
マルチコアテストでは、4,044cbから4,324cbへと約7%スコアが上昇し、オーバークロックによる効果は確実にある。ただし、シングルコアテストでは約9%スコアが低下。これはRyzen 9 3950Xでは、自動オーバークロック機能によって最高4.70GHzまでクロックが上昇するためだと思われる。
シングルコアテストでは、やはり定格時よりクロックが低くなるためスコアが落ち込んでいる。第3世代Ryzenシリーズで、シングルスレッド処理性能を落としたくない場合は、定格で運用したほうが良さそうだ。一方、マルチコアテストでは、「CINEBENCH R15」よりテスト時間が長く、自動オーバークロックの効きが悪くなることから、スコア差は約9%に広がった。
もともとグラフィックスカード性能の影響が大きい「3DMark」。しかし「Time Spy」では、いずれのプリセットでも定格よりスコアは優勢。CPUのオーバークロックの効果も確実にあるようだ。
「Time Spy」よりもマルチコアへの対応度が低い「Fire Strike」でも、スコアの傾向はほぼ同じ。すべてのプリセットでオーバークロックが定格を上回り、多少でもマルチコアに対応しているベンチマークであれば効果があるようだ。
最後にオーバークロックによる消費電力の違いと、オーバークロック状態で「CINEBENCH R20:マルチコアテスト」を連続5回実行した場合のサーモグラフィの結果を確認していこう。
まず消費電力だが、アイドル時は省電力機能が有効に働くためほとんど違いはなし。また「CINEBENCH」実行時の違いを確認すると、定格でも自動オーバークロック機能によって1.4V強までコア電圧が引き上げられるため、その差は約15Wとそれほど大きくない。それでいて処理性能は7~9%上昇することから、マルチスレッドに最適化された処理を行う場合には、手動オーバークロックは有効な手段になるだろう。なお「3DMark」系のベンチマークでは、グラフィックスカードの消費電力の影響のほうが大きく、CPUのオーバークロックの影響は数字に現れなかった。
OC/アイドル時のサーモグラフィ | OC/高負荷時のサーモグラフィ |
またサーモグラフィの結果を見ると、オールインワン型水冷ユニットを使用するエアフローの悪い状態にもかかわらず、電源周りの温度は50℃を超えることはなかった。大型ヒートシンクによる冷却性能は良好で、よりピーキーなチューニングにも耐えてくれることだろう。
Ryzen 9 3950Xのオーバークロックも楽にこなす強力な16フェーズ電源回路や、信頼性・安定性に定評のある2.5ギガビットLANとWi-Fi 6無線LANによるネットワーク機能。さらにAMD CrossFire Xのみという制限はあるものの、マルチグラフィックスにも対応するPCI-Express4.0スロットなど、豪華な装備を身に纏う「B550 Taichi」。
チップセット的には上位にあたるAMD X570のハイエンドモデルと比較しても、違いはチップセット制限によるHyper M.2スロット数ぐらい。正直ミドルレンジクラスのチップセットを搭載したマザーボードの範疇を(いい意味で)逸脱しており、最近ラインナップが大幅に拡充されたRyzen 9/7クラスのCPUで、ハイエンドPCを組もうと考えているなら「B550 Taichi」は有望な選択肢になるはずだ。
協力:ASRock Incorporation