エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.907
2020.09.09 更新
文:撮影・エルミタージュ秋葉原編集部 松枝 清顕
CPUクーラーの有効スペースは、高さ175mmまで。幅220mmのミドルタワーPCケースとしては、優秀な数値と言える。140mmファンを採用するサイドフロー型CPUクーラーも選択肢に入るだろう。とは言え、本稿では空冷ではなくオールインワン型水冷ユニットを用意した。せっかくフロントにアドレサブルRGBファンが搭載されているだけに、ラジエターもアドレサブルRGBファンで揃えようという目論見だ。
用意したのはラジエターに120mmアドレサブルRGBファン2基を搭載し、ウォーターブロックにもイルミネーション機能を内蔵するAntec「Neptune240」。2020年1月に発売され、実勢価格税抜12,000円(2020年9月現在)で購入できる、コストパフォーマンスに優れた製品だ。
Antec「Neptune240」はウォーターブロックヘッドのAntecロゴが象徴的。PCケースとメーカーを揃える事で、ちょっとした優越感を味わうこともできる。これも自作PCには重要な要素だろう |
そもそも360mmサイズまでをサポートするトップパネルだけに、240mmサイズラジエターは前後に十分な空きスペースを残してマウントできた。またテフロンコートを施した高品質PTFEチューブは比較的硬めだが、ウォーターブロックを軸にラジエターのポジションを調整することで、ストレス無くマウントができている。
スリットタイプのネジ穴は、ラジエターの固定位置が調整可能。ワッシャーを介したネジ留めは合計8箇所で行った |
最後にグラフィックスカードを搭載する。今回は以前詳細検証をお届けしたMSI「GeForce RTX 2080 VENTUS 8G OC」をチョイス。GPUはハイエンドながら、奥行きを268mmに抑えたデュアルファン搭載のグラフィックスカードだ。
拡張カードの有効スペースは405mm。現実的にこれほど長いグラフィックスカードは無いため、流通する市販品は問題なく搭載できるだろう。ただし注意が必要なのは、フロントパネルの内側にラジエターを搭載した場合。厚さ分だけ拡張カードの有効スペースが削られる関係にある事は、念のため頭に入れておこう。
MSI「GeForce RTX 2080 VENTUS 8G OC」を組み込んだところ、フロントパネルまでの空きスペースは、実測で約135mmだった。カード長268mmなので、合計403mmとほぼ公称値通り。PCケース前方へのクリアランスは十分なため、重量級グラフィックスカードを支えるサポート金具等の設置もできるだろう。
最後に逆回転ファンの効果について、考えてみたい。設置は任意であるものの「F-LUX PLATFORM」を推奨するエアフロー設計は、逆回転ファンをマウントさせてこその完結する。そこでフロント3基、トップ2基、リア1基、ボトムカバー天板1基の計7基で稼動させてみると、エアフロー重視のミドルタワーPCケースという性格が明確になった。
この状態で右サイドパネル下部に設けられた通気孔に注目すべく、スモークテスターを用意。風の流れをチェックしたところ、想像よりもやや弱い印象ながら、逆回転ファンが外気を取り込む状況は視認できた。
“想像よりもやや弱い”理由は、思いのほか3基のフロント120mmファンの直線的なエアフローが強いためだろう。特に影響を受けやすい最下段のファンは、ボトムカバーをトンネルに見立て、一直線に後方へ外気を送り続ける。どうしても吹きつけよりも吸い出しは静圧が落ちるため、勢いのあるフロントファンに負けてしまっているようだ。
「DF600 FLUX」がAntecの新提案「F-LUX PLATFORM」の第1弾となり、現時点第3弾まで計画されている事は冒頭触れた通り。その象徴であるボトムカバー天板部の逆回転ファンは、若干内部エアフローに疑問は残るものの、右側面を利用した新基軸として、注目の仕掛けである事に違いはない。ちなみにCPUソケット背面など、右側面に冷却機構をプラスした製品は過去にも存在したが、現在では積極的な採用例が無いところをみると、市場のジャッジはネガティブだった事が想像できる。
件の逆回転ファンは、そのレイアウトからグラフィックスカードへ直接風を当てる事が目的である事は明白だが、風の供給先はGPUではなくVGAクーラー(またはカバー)だ。解釈としては”グラフィックスカードを冷却するVGAクーラーに対し、フレッシュな外気を強制的に送り続ける”が正解だろう。この話は内緒だが、Antecよりテスト資料をコッソリ見せてもらうと、数値には明らかに効果が表れていた。残念ながらその数値は開示できないが、意味のある仕掛けであることは間違いない。
外気の取り込みで冷却能力を高めようという考えは、以前大流行したパッシブダクトに極めて近い。いつの間にか姿を消してしまったが、CPUクーラーの主流がサイドフロー型になった事や、オールインワン型水冷ユニットの台頭により、役目を終えたという事だろう。「DF600 FLUX」の逆回転ファンとは事情が異なるものの、新機構はどのように受け入れられるだろうか。年末までにリリースされる次作にも期待したい。
協力:Antec
株式会社リンクスインターナショナル