エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.917
2020.10.02 更新
文:/撮影・pepe
最後のセッションでは、スペックアップでリフレッシュレート165Hz駆動となった「Optix MAG272CQR」の実力をチェックしていこう。検証環境はIntel Z490マザーボードに、第10世代のIntel Core i9-10900K、DDR4-3200MHz 16GB(8GBx2)、GeForce RTX 2080 Tiを使用している。
はじめにリフレッシュレートの違いを体感するために、レースゲーム「Assetto Corsa」のリプレイを使用し、リフレッシュレート60Hz/100Hz/144Hz/165Hzでそれぞれの違いを比較する。テストではディスプレイ同期を有効化するとともに、デジタルスチルカメラのスーパースローモーションにより画面を直接撮影している。
60Hzや100Hzと比較すれば144Hz以上の滑らかさは圧倒的だが、それに対して144Hzと165Hzでは一見大きな差は無いようにも見える。
今度は144Hzと165Hzだけを比較してみよう。横並びにすることで165Hzの方が、僅かに滑らかなのが分かるだろう。その差は微々たるものかもしれないが、ハイレベルなプレイになればなるほど、その僅かな差が結果に出るのではないだろうか。ただし残像感や残像が消える速さについては、今回の検証ではどちらも差が無かった。
続いてディスプレイ同期を無効にすると、どのような影響がでるか見ていこう。先ほど同様に、テストにはレースゲーム「Assetto Corsa」のリプレイを使用し、リフレッシュレートはいずれも165Hzに設定。デジタルスチルカメラのスーパースローモーションにより、画面を直接撮影している。
ディスプレイ同期をOFFにすると、それまでは全く問題なかった画面が水平方向にせん断されたようなズレが発生した。これが書き換え中の画像と書き換え前の画像が同時に表示されるティアリング現象だ。スーパースローモーションはもちろん、肉眼で見ていてもその不自然さは明らかだ。ディスプレイ同期を有効にすることで、PCのゲーミングパフォーマンスにやや影響を与えてしまうが、安定したFPSを維持できるマシン構成ならば積極的にONにしたいところだ。
AMD環境では「RADEON設定」から、NVIDIA環境では「NVIDIAコントロールパネル」からON/OFFが設定できる。なおOSD側からディスプレイ同期を直接無効にすることもできるが、その際は設定項目自体が表示されなくなるため注意が必要だ |
続いて「応答時間」の設定を変えることで、残像感にどのような変化があるか確認する。OSDのデフォルトでは「速い」に設定されているが、「通常」/「速い」/「最も速い」でそれぞれの違いを「Blur Busters UFO Motion Test」で確認してみよう。リフレッシュレートは165Hzに設定し、その際の映像をデジタルスチルカメラのスーパースローモーションで直接撮影している。
「応答時間」は「速い」と「最も速い」に比べると明確な差は無いように見受けられるが、「通常」では確かに残像感が長く残っているようだ。今回の結果をもとにすると特別な理由が無ければデフォルトである「速い」、さらに問題が無ければ「最も速い」と設定する方が良い結果になるだろう。
最後のテストでは、バックライトの強制点滅によりモーションブラーを軽減する機能「アンチモーションブラー」の効果を確認しよう。旧モデルでは「応答時間」を「最も速い」と設定することで、「アンチモーションブラー」が有効化される設定だったが、「Optix MAG272CQR」では異なる機能として差別化されている。なお「アンチモーションブラー」は、ディスプレイ同期とは排他利用となるため注意が必要だ。テストではリフレッシュレートを165Hzに設定し、「Blur Busters UFO Motion Test」で確認、先ほど同様にデジタルスチルカメラのスーパースローモーションで直接撮影している。
「Optix MAG272CQR」のモーションブラーを有効にすると液晶全体の輝度が下がるが、これはバックライトの強制点滅による仕様で。一般的に「モーションブラー低減」と言われる機能はすべて同様の現象が発生するが、実際に肉眼で見ている際はそこまで気にならない。
「アンチモーションブラー」により赤フレームが挿入されると、残像が見えにくくなり、残像感が減ったと感じることができる。この赤フレームの通過直後に強いシアン色が確認できるが、その効果は一瞬のため「輝度が下がった」以外の印象(“赤っぽい”や“シアンっぽい”)を受けることはない。ただし、明転した際のシアン色が強いため、背景色がホワイトに近い部分では一瞬白飛びのような現象が起こっているようにも見える。これはバックライトの点灯時間減少で輝度低下を補うために、一時的に輝度を高めているのかもしれない。
旧モデルの登場から約1年半、「Optix MAG272CQR」は1,500Rの曲率でより没入感を高め、最高リフレッシュレートを165Hzに引き上げた。さらに8bit+FRCや広色域への対応で、より表現力の高いモデルとしてパワーアップしている。また、DP Alt modeに対応するUSB Type-Cポートも搭載することで、USB Type-Cから映像出力可能なハイエンドノートPCのセカンドディスプレイとしても使える。
没入感という観点から言えば、さらに上の32型サイズが理想ではあるが、物理的な大きさの問題から導入が困難なケースもあるだろう。例えばデスクの上にはPC本体が鎮座しており横幅に制限や、そもそも液晶の設置を考慮されておらず奥行きの短いデスクなど。そういった日本ではありがちなお家事情において、27型はギリギリ置けるかもしれないサイズ感と言える。
最も注目すべきは、やはり最大リフレッシュレートが165Hzになったことだろう。例えば最新の3DCGを駆使したAAAタイトルでは、現状のフルスペックマシンを用意してもFPSに余裕は少なく、PC本体の予算も青天井になってしまう。一方、いわゆるeスポーツ向けのタイトルであれば話は別。グラフィックス設定を落とせば、旧世代のマシンでも120Hzは比較的維持できるようになっている。もちろん実際に「Optix MAG272CQR」を使用するユーザー次第ではあるものの、eスポーツ向けタイトルでのプレイをメインに考えているのであれば、手ごろなサイズ感と高リフレッシュレートで没入感や臨場感を楽しめるモデルになっているのではないだろうか。
協力:エムエスアイコンピュータージャパン株式会社