エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.929
2020.11.05 更新
文:撮影・エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹
マルチスレッドに最適化されている「Time Spy」。Ryzen 9 5950Xを筆頭に、Ryzen 9 3950X、Ryzen 5 5600X、Ryzen 5 3600XTが並ぶ順当な結果。ただし、GPU性能の影響が大きいこともあり、Ryzen 9 5950XとRyzen 9 3950Xの差はいずれも1%未満、Ryzen 5 5600XとRyzen 5 3600XTでも最高約3%に留まる。
「Fire Strike」でも傾向は「Time Spy」と同じ。マルチコアへの最適化がある程度進んでいるため、コア数によるスコア差はあるものの、アーキテクチャの違いによる差はそれほど大きくない。
GPUへの負荷が高い4K解像度では、スコアはいずれも約7,300ポイントで横並び。一方、WQHD解像度(2,560×1,440ドット)では、Ryzen 5 5600XでもRyzen 9 3950Xを4%、フルHD解像度(1,920×1,080ドット)では約20%上回り、GPUの負荷が低い低解像度環境では、シングルスレッド性能が大きくスコアに影響する。
RPGながら重いゲームとして知られている「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION」だが、フルHD解像度やWQHD解像度ではRyzen 5 3600XTのスコアが若干低く、わずかだがCPU性能の影響があるようだ。ただし負荷が上がる4K解像度では、全てのCPUでスコアがほぼ横並びになる。
画質を重視した“最高”設定や、“カスタム設定”でもWQHD解像度までは、Ryzen 9シリーズがRyzen 5シリーズを上回る。一方、フレームレートを重視した“カスタム設定”のフルHD解像度では、Ryzen 9 5950Xが387.7fps、Ryzen 5 5600Xでも369.9fpsまでフレームレートが上がるのに対して、Ryzen 9 3950Xでは328.8fps、Ryzen 5 3600XTでは298.1fpsで頭打ち。フルHD解像度で、フレームレートを追求するなら、現状最も下位に位置づけられるRyzen 5 5600Xでも、Ryzen 3000シリーズの上位モデルを上回ることができる。
「Wolfenstein: Youngblood」では、フルHD解像度でRyzen 5 3600XTのスコアが若干だが低く、GPUへの負荷が軽い状態だと多少はCPU性能の影響があるようだ。ただし、その他の解像度ではいずれもほぼ横並び。「Wolfenstein: Youngblood」ならどのCPUを選択してもゲームプレイに大きな違いはないだろう。
省電力機能が有効になるアイドル時は、コア数やアーキテクチャに関係なく60W前後で横並び。また高負荷時はRyzen 9 5950XとRyzen 9 3950Xで約10W、Ryzen 5 5600XとRyzen 5 3600XTでも約10W低くなった。CPUの消費電力は個体差が大きいため、全てのCPUで同様の結果になるわけではないが、少なくともRyzen 3000シリーズで使用していたCPUクーラーはそのまま流用できる。
メインストリーム向けでは初の8コア/16スレッドに対応した初代Ryzenや、ハイエンドデスクトップ(HEDT)向けに匹敵する16コア/32スレッドを達成した第3世代Ryzenなど、メインストリームCPUのコア数の壁を次々に打ち破り、常にマルチスレッド性能をリードしてきたAMD Ryzen。一方、シングルスレッドやゲームでは、内部設計の違いや、動作クロックの違いもあり、ライバルに対してやや不利な戦いを強いられてきた。
そこで「Zen 3」アーキテクチャでは、内部設計の見直しによるレイテンシの削減や、IPCの引き上げ、さらなる高クロック化などの改良を実施。これにより「CINEBENCH」のシングルコアテストでは、「Zen 2」から20%以上もスコアが上昇し、現行のデスクトップCPUでは間違いなく最高峰のパフォーマンスを発揮する。
コア数が増えるとシングルスレッド性能が犠牲になるという、これまでの常識を覆した「Ryzen 5000」シリーズ。オフィスユースやゲーマーから、クリエイターまで万人にオススメできる |
またこれまでやや低調だった「PCMark 10」や、ゲーム系ベンチマークでもスコアが向上。特にCPUがボトルネックになりやすい、解像度を抑え、リフレッシュレートを追求する環境でのスコア(フレームレート)の伸びは素晴らしく、“Ryzen=高リフレッシュレートは苦手”というイメージは完全に払拭された。
さらにレイテンシの削減やIPCの引き上げは、マルチスレッド性能にも好材料。一部のクリエイティブ関連ベンチマークでは、実に4コアの差をひっくり返してしまうものもあった。それでいて消費電力は従来と同等以下に抑えられており、正直現時点では弱点が見当たらない。
協力:日本AMD株式会社