エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.931
2020.11.12 更新
文:撮影・エルミタージュ秋葉原編集部 松枝 清顕
続いてグラフィックスカードを搭載してみよう。資料によると、有効スペースは最大で491mm、フロントファン(25mm厚)搭載時は467mmとされる。さらに大きくスペースが占有される「ストレージレイアウト」時でも315mmが確保できることから、内部の広さが容易に想像できる。
さて、搭載テストには、以前詳細検証を行ったGIGABYTE「GV-N3080GAMING OC-10GD」を用意。2.7スロットを占有する大型VGAクーラーを装備し、カード長は320mmにおよぶ。
内部空間に余裕があると、思いのほかハイエンド志向のグラフィックスカードが大きく見えない。今回は「オープンレイアウト」での装着という事もあり、フロント標準ファンまでの距離は、実測で約130mmを残した。公称値の足し算ではやや数値が合わないものの、計測する部分によるところもあり、今回は誤算範囲内としたい。それでも十分クリアランスは保たれている事に、間違いはない。
ここでオプションパーツとして今年10月より販売がスタートした「Flex B-20」(型番:FD-A-FLX1-001)をご紹介しておこう。PCI-Express3.0(x16)フルサポートのライザーケーブル付きブラケットで、「Define 7」や「Meshify 2」で採用されるブリッジレス拡張スロットに対応。これを用いることで、グラフィックスカードの垂直マウントが実現する。
Fractal Design「Flex B-20」(型番:FD-A-FLX1-001)(2020年10月16日発売) 外形寸法/134x145x182mm/重量248g |
「Define 7」や「Meshify 2」には垂直マウント用拡張スロットの装備があるため、”ライザーケーブルだけであればいい”という声は当然あるだろう。しかしこの製品の主たるコンセプトは、サイドパネルから離れた箇所にグラフィックスカードが垂直マウントできる点にある。つまり、単に魅せる要素ではなく、正対するVGAクーラーのエアフローをスムーズできる効果があるというワケだ。
ポンプやリザーバーの設置スペースが設けられている「Meshify 2」だが、本稿ではオールインワン型水冷ユニットの搭載テストを試みた。用意したのは240mmサイズラジエターを備えるFractal Design「Celsius+ S24 Prisma」(型番:FD-W-2-S2402)だ。
トップパネルに固定したラジエターの長さが284mmとグラフィックスカードよりも短いため、当然ながら問題なく収める事ができている。作業自体も広いスペースから、一般的なミドルタワーPCケースに比べ、スムーズに行う事ができた。「Meshify 2」に限っては、360mmサイズラジエターの「Celsius+ S36 Prisma」(型番:FD-W-2-S3602)でも難なく搭載できるだろう。
トップパネル部のブラケットにネジ留めされた240mmサイズ(全長284mm)ラジエター。ネジ穴はスリットタイプのため、固定位置の調節が可能。上空から見る限り、360mmサイズ(全長403mm)のラジエターでも問題はなさそうだ |
ちなみに、DIY水冷を構築するベース筐体としてもオススメができる。「オープンレイアウト」時なら、ボトムカバー上部のABS樹脂製「ケーブルカバー」上に「Universal Multibracket」を設置すれば、ポンプやリザーバーが固定可能。さらにフロントパネル面に240mmサイズ以上の大型ラジエターを搭載する場合は、前寄りの「ケーブルカバー」1枚を取り払えば、60mmの空きスペースが確保できる。最適化された広い内部容積を活用して、DIY水冷にチャレンジしてもいいだろう。
熱心なエルミタ読者なら既にお気付きのはずだが、今回の主役である「Meshify 2」は、ベストセラー機「Define 7」と共通の筐体を採用するバリエーションモデルだ。主要な内部構造はほぼ同じで、一度「Define 7」を検証している身としては、やりやすくもあり、やりにくくもあった。
改めて見比べてみると、構造的には5.25インチオープンベイが省略されている点が大きな違いだろう。さらに外観的にはフロントフェイスがまるで異なり、自動車業界でいうところのバッジエンジニアリングモデルさながら、似て非なるミドルタワーPCケースとして、見た目の好みで選べばいい。
違う事を書くと具合が悪いため「Define 7」検証記事の総評を読み直してみた。さすがに大筋は変わらないものの、当時記した”まったくと言っていいほど癖の無いミドルタワーPCケース”という部分には、自らに異論を少々。組み上がりを眺めると、特に「オープンレイアウト」時は内部容積の広さも手伝い、構成パーツ同士が密集しておらず、スッキリとスマートに見える。しかし、余すところなく紹介するには手にあまるギミックの多さと、ABS樹脂製の内部パネルや「ケーブルカバー」の取り外し方法などFractal Design流の独特なルールは、自作経験の浅いユーザーにとってハードルに見えるだろう。完成形は癖が無いものの、完成までの工程には癖ありといったところだろうか。
とは言え、それが自作PCの醍醐味であり、純粋に楽しませてくれる。熟成を重ねて進化し続けるFractal Designの筐体を、是非堪能して欲しい。
協力:Fractal Design
株式会社アスク