エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.933
2020.11.18 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹/撮影:松枝 清顕
続いて、消費電力をチェックしていこう。ストレステストには「3DMark Time Spy Extreme Stress Test」を使い、実行中の最高値を高負荷時、起動後10分間何もせず放置した状態をアイドル時として計測を行った。
アイドル時の消費電力は、Radeon RX 6800で約3W、Radeon RX 6800 XTで約4W高いものの、ほとんど誤差の範囲。そしてこれまでAMDが苦戦していた高負荷時だが、GeForce RTX 3080と比較して、Radeon RX 6800 XTで約50W、Radeon RX 6800では100W弱も低くなった。
MSI「GeForce RTX 3080 GAMING X TRIO 10G」のTDPは通常より20W高い340Wであることを考慮しても、「Radeon RX 6800」シリーズの方が消費電力は圧倒的に低く、レイトレーシング機能を除けばワットパフォーマンスはRadeon RX 6800 XTが有利だ。ちなみに「Rage Mode」を有効にした場合でも、消費電力の増加は20W弱に収まっており、やはりGeForce RTX 3080より低く抑えられている。
最後にリファレンスモデルに実装されているトリプルファンクーラーの冷却性能をチェックしていこう。消費電力の計測と同じく、ストレステストには「3DMark Time Spy Extreme Stress Test」を使用している。
高負荷時のファンの回転数およびGPU温度は、Radeon RX 6800 XTがそれぞれ1,750rpm前後と72℃前後、Radeon RX 6800が1,700rpm前後と76℃前後で、いずれも冷却性能に問題はなし。
またRadeon RX 6800 XTで「Rage Mode」を有効にすると、ファンの回転数は2,250rpm前後まで上昇。そのためGPUの温度は70℃前後まで下がり、最も低くなった。その状態でもファンのノイズは「Radeon VII」のような勇ましさはなく、45dBA前後で頭打ち。PCケースに入れてしまえば気にならないレベルだった。
Ryzenシリーズによって巻き返しに成功したCPUと違い、GPUではここ数年ライバルのハイエンドに対抗できる製品をリリースできず、苦戦を強いられてきたAMD。しかし最新アーキテクチャ「RDNA 2」を採用する「Radeon RX 6800」シリーズの登場によって、ようやくその状況が打破された。
レイトレーシング性能については今後さらなる改良が必要なものの、純粋なゲーム性能ではAMDの謳い文句通り、ライバルと互角のパフォーマンスを発揮。これまで非対応だった「DirectX 12 Ultimate」をサポートし、機能面でも大きな違いはなくなった。さらに苦手としていた消費電力も大幅に改善され、ワットパフォーマンスではライバルを上回る。
そして、AMDプラットフォーム全体として考えた場合、シングルスレッド性能が飛躍的に向上したRyzen 5000シリーズの登場。さらに「Smart Access Memory」というCPUと連携した隠し玉とも言える機能が追加されたことで、ゲームPCでAMDプラットフォームを選択する強力なモチベーションになるはずだ。
遂にハイエンドで戦えるGPUを投入することに成功したAMD。来月発売予定のフラッグシップモデルRadeon RX 6900 XTの性能にも大いに期待ができそうだ。
協力:日本AMD株式会社