エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.937
2020.11.27 更新
文:撮影:松枝 清顕(解説)/ 検証セッション:池西 樹
CPUからの熱を吸い上げる重要な役割を担う、受熱ベースプレート。ニッケルメッキ処理が施され、CPUと直接触するベース板(縦43mm、横42mm)が5本のヒートパイプをサンドイッチする格好で15mm厚の受熱ベースを構築している。
受熱ベースプレートは2枚で構成。リテンションの一部であるクロスバー装着済みの上部(約10mm)と、ヒートパイプを挟んでCPUに直接触するベースプレート(約5mm)は、それぞれ密着率の高さで冷却性能が決まる重要なポイントになる |
そして、冷却ファンを外した状態で眺めるとよく分かる、φ6mmのヒートパイプレイアウト。冷却ファンが接触する側から、手前の1本目は「左・外端と右・内端」、2本目は「左・内端と右・外端」、3本目は「左右とも中央」、4本目は「左・外端と右・内端」、5本目は「左・内端と右・外端」といった具合で、放熱フィンに対し交互に貫通している。
トップ部から下方向へダラリと垂れ下がって見えるのが、トップ部内蔵のアドレサブルRGB LED用のケーブル。この配線がある面に、冷却ファンを固定する事になる |
おさらいすると、ヒートパイプは受熱ベース部から吸い上げたCPUからの熱を、放熱フィンに熱移動させる装置であり、よりまんべんなく全体に拡散させることで、効果的な冷却性能を引き出す事ができる。レイアウトもさることながら、放熱フィンに貫通した接触部分の密着も重要で、受熱ベースプレートと同様、工作精度や製造工程で性能が決定付けられる。近頃の製品はよくできており、見た目から判断する事が難しくなっている。
標準搭載ファンは25mm厚の140mmサイズ。製品資料によると型番は「TF140S PWM」とされている。型番を検索すると、Deepcoolが展開するゲーミングブランドであるGAMER STORMの同型番「RADIATOR FAN」に行き着くが、特徴的な角をカットしたフレームとは異なり、別物である事が分かった。
「AS500」搭載の「TF140S PWM」は、回転数500~1,200rpm±10%でPWM対応のワイドバンドかつ低速仕様。風量は最大70.81CFMとされ、騒音値も最大で29.2dBAに抑えられている。先ほど触れたGAMER STORMの同型番は、回転数が高く、騒音値もプラス10dBAで、その分だけ風量もアップしている。製品名からも分かるように、そもそもラジエター用に設計された冷却ファンで、標準搭載ファンはCPUクーラー用にアレンジされた製品のようだ。
とは言え両者には共通点があり、特徴的なインペラには回転方向先端にスリットが設けられており(特許取得済みの二重層ファンブレード)、乱流を抑制する効果が期待できる。この手の採用例はこれまでにも複数流通しているが、細部にわたる各社の最適化に対する取り組みにより、僅かながらでも進化を続けている様が感じられる。