エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.939
2020.12.04 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹
ここからはよりゲームに近いベンチマークを進めていこう。まずはMMO RPGの最新アップデート版「ファイナルファンタジーXIV: 漆⿊のヴィランズ」公式ベンチマークテストの結果を確認する。なお今回は内蔵グラフィックスということを考慮して、解像度は1,920×1,080ドットに固定し、画質設定は「最高品質」「高品質(デスクトップPC)」「標準品質(デスクトップPC)」の3種類を選択した。
「最高品質」や「高品質(デスクトップPC)」では、いずれも判定は“やや快適”止まりで、過度の期待は禁物だ。ただし、描画品質を「標準品質(デスクトップPC)」まで落とすことで、スコアは約1.5倍も上昇。判定も“快適”になり、大規模なレイドバトルでなければ問題ないレベルまでパフォーマンスを引き上げることができる。また標準設定と「35W」設定を比較すると、描画品質に関わらずその差は1%未満に留まる。
グラフィックス系ベンチマークのラストは、タクティカルシューターゲーム「Tom Clancy’s Rainbow Six Siege」のベンチマーク結果を確認していこう。APIはVulkan、解像度は1,920×1,080ドットで、総合品質は「低」「中」「高」「超高」を選択。また計測にはゲームに内蔵されているベンチマークテストを使用した。
比較的GPUの負荷が軽いゲームということもあり、総合品質が「低」や「中」ではマルチプレイの目安となる60fps超えを達成。「高」や「超高」でも50fps後半を維持できており、ある程度描画の品質にもこだわることができる。なおビデオメモリの割当が初期設定の512MBだと、起動時にビデオメモリ不足のアラートが表示されるので、「Tom Clancy’s Rainbow Six Siege」をやる場合はビデオメモリの割当を増やすのを忘れずに。
また標準設定と「35W」設定を比較すると、こちらも総合品質に関わらず違いは出なかった。ここまでの結果を見る限り、シングルスレッドアプリケーションやゲームであれば、基本的に「35W」設定で使用するのがオススメだ。
MINISFORUM「X400」では、高さを抑えるため厚さ約25mmの超ロープロファイルCPUクーラーを搭載しているが、TDP65Wのデスクトップ版APU Ryzen 5 PRO 4650Gを十分に冷却することができているのだろうか。そこで、今回はストレステスト「OCCT 7.0.4 CPU:LINPACK」を使い、確認してみることにした。
標準設定では、テスト開始直後は「Precision Boost 2」や「XFR 2」などのブースト機能によって、動作クロックは約4.25GHz、CPU温度も85℃を超える。しかし、その後は動作クロックが3.825~4.125GHz、CPUの温度は75~81℃の間で安定して推移し、冷却性能が不足する心配はない。
続いて「35W」設定時の結果を確認すると、テスト開始直後はやはりブースト機能によって、動作クロックは3.475~4.125GHz、CPU温度は58℃まで上昇する。ただし、ブースト機能の効果が切れると、動作クロックは3.175~4.00GHz、CPUの温度は55℃前後まで低下し、標準設定に比べて冷却性能にはかなり余裕ができていることがわかる。
なおMINISFORUM「X400」では、ファンの回転数が取得できなかったが、騒音値は標準設定が43.1dBAまで上昇したのに対して、「35W」設定では40.1dBAまでしか上がらず、回転数も確実に低くなっていた。
ベンチマークテストのラストは消費電力を確認していこう。高負荷時は「OCCT 7.0.4 CPU:LINPACK」を30分実行したときの値、アイドル時は起動直後10分間放置した際の数値を採用している。
アイドル時の消費電力はいずれも約7.4Wで横並び。一方、高負荷時は標準設定の78.41Wに対して、「35W」設定では46.54Wで頭打ちとなり、ほぼTDPに準じた結果。なおテスト開始直後の最高値は「35W」設定で52.54W、標準設定では96.32Wに達し、ACアダプタの限界に近い出力を記録した。
デスクトップ版Renoirを採用しながら、約150mm角、厚さ63mmのコンパクトサイズを実現したMINISFORUM「X400」。プロセッサが最上位のRyzen 7 PRO 4750Gではない点は正直残念だが、標準設定時の最大消費電力がすでに90Wを超えていることを考えると、安全に動作するラインを選択した結果ということなのだろう。
パフォーマンスについては、デスクトップ版Renoirとしてはミドルレンジという位置づけながら、IntelのノートPC向けハイエンドであるCore i9-9980HKに匹敵するCPU性能を発揮。さらに定評のある内蔵GPUと、高速なDDR4メモリのおかげで、内蔵GPUを使用しているミニPCとしては、間違いなく現行最高峰のグラフィックス性能を備えている。
そして、組み立てが不要な完成品として販売されているため、購入してすぐに使えるのも大きなメリット。標準ストレージの容量が256GBとやや少ないのはマイナスだが、2.5インチSSD/HDDやM.2 2242 SSDの増設は可能。さらにデスクトップPCということで、外部ストレージの利用も現実的な選択肢になることから、大きな問題ではない。
価格もWindows 10 Pro 64bit版やWi-Fi 6無線LAN機能が込みで税込75,000円(Makuakeの早期販売では原稿執筆時点で税込71,500円から)で、個別にパーツを購入して自作するのとほとんど変わらない。速くて小さいデスクトップPCが欲しいなら、組み合わせに悩まず手軽に使えるMINISFORUM「X400」はオススメだ。
協力:MINISFORUM