エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.953
2021.01.15 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹/撮影:松枝 清顕
定格はもちろん、オーバークロックによる運用も想定した堅牢な電源回路を備えるASUS「ROG Crosshair VIII Dark Hero」。基板上には「TPU」と呼ばれる自動チューニング用の制御チップも実装されており、「AI Suite 3」ユーティリティを使えば、比較的安全かつ簡単にパフォーマンスを引き上げることができる。そこで、今回はRyzen 9 5950Xの自動オーバークロックを試してみることにした。
「AI Suite 3」ユーティリティを使うと、コアクロックや電圧だけでなく、ファンの回転数などもまとめて調整してくれる |
今回のシステムでは全コア4.575GHzまでオーバークロックすることができた |
約10分の自動チューニングによって、今回のシステム構成では定格(3.40GHz)から3割以上も高い全コア4.575GHzまでクロックを引き上げることができた。ストレステストとして「OCCT 7.2.5:Linpack」を30分間動作させてみたが、不安定な挙動はなし。CPUの温度も80℃を超えることはなく、「AI Suite 3」による自動チューニング機能はかなり優秀だ。
アイドル時(左)と高負荷時(右)の電源回路のサーモグラフィ結果。高負荷時にはヒートシンク全体の温度が上昇し、Power Stage ICやチョークコイルを効率的に冷却している様子が確認できる |
最後にオーバークロックの効果と、その際の消費電力を確認していこう。なおベンチマークソフトは「CINEBENCH R15」「CINEBENCH R20」「CINEBENCH R23」の3種類を使用し、アイドル時の消費電力は起動直後10分間放置した際の最低値、高負荷時はベンチマーク実行中の最高値を採用している。
定格時は最高4.90GHzまで上昇するため、シングルコアテストのスコアは約5%低下。一方マルチコアテストのスコアは約17%もアップし、5,000cbを上回る良好なスコア。このことから、ゲームやオフィスワークが中心なら定格で。動画のエンコードやレンダリング作業が中心ならオーバークロックを試してみるといいだろう。
「CINEBENCH R20」の傾向は「CINEBENCH R15」とほぼ同じ。シングルコアテストではスコアが低下するものの、マルチコアテストでは大幅にスコアが上昇する。
マルチスレッドへの最適化が進んでいる「CINEBENCH R23」。シングルコアテストはこれまでと同じだが、マルチコアテストでは約19%に差が広がっている。高解像度の動画エンコードやレンダリングなど、重いマルチスレッド処理をする場合、自動チューニングを施すことで処理時間を大幅に短縮することができる。
アイドル時の消費電力は定格とほぼ変わらず。一方、高負荷時の消費電力は約75Wも上昇。Ryzen 5000シリーズのハイエンドモデルをオーバークロックする場合は、CPUの冷却だけでなく、マザーボードの電源回路にもこだわる必要がある。
これまで苦手としていたシングルスレッド性能が飛躍的に向上し、ゲーム用途でもライバルに対して全く見劣りすることがなくなったRyzen 5000シリーズ。さらにAMD Radeon RX 5000/6000シリーズに加え、NVIDIA GeForce RTX 30シリーズもPCI-Express4.0に対応したことで、ゲーミングPCのプラットフォームとして魅力的な存在になった。
そんなRyzen 5000シリーズの相棒となるべく投入された「ROG Crosshair VIII Dark Hero」。ハイエンドゲーミングを標榜するだけあり、ネットワークやオーディオ機能については現行のマザーボードの中では間違いなく最高クラス。また堅牢な電源回路や、「TPU」による自動チューニング機能も秀逸で、冷却さえしっかりしていれば手軽に20%近いパフォーマンスアップが期待できる。
さらにAMD X570では当たり前だったファンを排除しつつ安定動作を可能にする高冷却のチップヒートシンクや、最新NVMe M.2 SSDのサーマルスロットリングを完全に抑制できるM.2ヒートシンクなど、電源回路以外の冷却機構も充実。これからRyzen 5000シリーズで、ハイエンドゲーミングPCを構築するなら間違いなくオススメできるモデルだ。
協力:ASUS JAPAN株式会社