エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.961
2021.02.08 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 絵踏 一/撮影:松枝 清顕
ここからは、ゲーム系ベンチマークを使用して、より実際の使用状況に近い環境を再現してみたい。まずはオンラインの人気タイトルである「ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ」の公式ベンチマークソフトをチョイス。グラフィックス設定を「最高品質」、解像度を3,840×2,160ドットに設定し、これまで同様30分間のループ動作で挙動を確かめることにした。
やや軽めのベンチマークではあるものの、4K解像度での動作とあって消費電力は最大502Wに。今回の検証においては最小の数値ながら、電源容量の約6割ほどの負荷はかかっており、より現実的でバランスの良い負荷環境であるとも言える。
その結果をグラフから見ていくと、さざ波のような微細な変動が発生しているのが見て取れる。ただし全体の電圧変動幅はこれまでとまったく変わらず、同じ範囲内での変動に留まっている点は頼もしい。不規則な負荷が連続しがちなゲーム環境においても、動作の安定性は変わらないようだ。
ベンチマークセッションの締めくくりには、同じくゲーム系ベンチマークの「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION」の公式ベンチマークを動作させてみる。先ほどより高負荷なゲーム環境では、いったいどのように挙動が変化するだろうか。なお検証に際しては、解像度を3,840×2,160ドットにセット、カスタム設定を利用して最も負荷が大きくなるように項目を選択し、30分間のループテストを行った。
テスト中の消費電力は最大582Wまで上昇し、「FFXIV」より大きい7割に迫る程度の負荷がかかっていた。
その結果は、逆に「FFXIV」より変動が少ないくらいで、極めて安定した挙動を示している。12Vの数値はほぼ12.096Vに張り付いて動作しており、それは誤差と言えるほど近い平均値(12.098V)からも窺える。なおここまで省略してきたが、12Vと同様に5Vと3.3Vの変動幅もテストを通してほぼ一貫していた。この点からも「C850」の高い信頼性が理解できるだろう。
NZXTの製品サイトを眺めてみると、思いのほか電源ユニットのラインナップが手薄であることに気付く。しばらくハイエンド製品の更新がないこともあり、現実的にこの「C」シリーズが唯一の選択肢であることは冒頭触れた通りだ。しかし今回「C850」を検証する機会を得たことで、それを“無駄弾の少なさ”と言い換えてもいいように感じている。
80PLUS GOLD認証のフルモジュラー電源という、一際競合の多いクラスにあって、「C850」の優れた信頼性はまったく見劣りしない。堅実な設計に加え、セミファンレスのオプションをユーザーが選択できる冷却機構、さらにNZXTらしいビジュアルの良さも相まって、総合的な完成度はクラス屈指だ。価格面でも十分な競争力があり、コストパフォーマンスの土俵でもいい試合ができるだろう。
正直なところラインナップの少なさは、そのままショップの棚における存在感に繋がっている気がしなくもないが、結果的に今回は“隠れた秀作”を再発見できた。派手なイルミネーションとも無縁で、どちらかと言えば質実剛健な部類に入る製品。世界観の統一を望むNZXTファンだけでなく、一般ユーザーにとっても価値のある選択肢になってくれそうだ。
協力:NZXT