エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.976
2021.03.19 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 絵踏 一/撮影:松枝 清顕
ここからは、より実際のゲームプレイ時に近い環境を検証するため、ゲーム系ベンチマークを実行。まずはオンラインの人気タイトルである「ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ」の公式ベンチマークソフトを動かしてみよう。グラフィックス設定を「最高品質」、解像度は3,840×2,160ドットに設定し、ループ動作でこれまで同様に30分間テストを行っている。
「Time Spy Extreme」と同じ4K解像度のテストで、最大消費電力もほぼ同じ506W。1000Wの電源ユニットとしては、やはり理想的な電力変換効率を発揮できる負荷環境だ。
グラフの波形パターンを見てみると、微細な変動はあるものの、大きなブレはなく全体的に安定している。12Vの最大/最小値は「OCCT」や「Time Spy Extreme」と同様で、ベンチマーク中は11.986と11.933を交互にマーク。平均値はほぼ定格値と誤差の範囲に留まっていた。全体的な変動が小幅に収まっている安心感は、積極的に評価できる。
ベンチマークセッションの締めくくりとして、同じくゲーム系ベンチマークから、より負荷の大きな「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」を実行。ウルトラハイエンド構成でもやや荷が重いヘビー級の処理では、どのように挙動が変わってくるだろうか。ちなみに解像度を3,840×2,160ドットで、描画品質はカスタム設定で最も負荷が大きくなるように項目を設定。これまで同様に30分間連続で動作させている。
まず消費電力をチェックしておくと、ベンチマーク中を通して最大538W。「FFXIV」よりやや大きめの負荷がかかっていた。
電圧変動は、5Vと3.3Vはほぼフラットながら、12Vはさざ波のような変動が長く続いている。数値が全体的に下振れしているため、平均値はこれまでよりやや低めながら、それでも定格から1%未満。最小値もピタリ同じ数値を維持しているほか、こちらも定格比で2%以下の変動に留まっている。システムへの影響はまったくなく、十分な信頼性を発揮できていると言えるだろう。
ZALMANのヒット作を数えれば枚挙に暇がなく、特にPCケースやクーラーに関しては、深い思い入れを抱く古参ユーザーは少なくない。それだけにブランドイメージも高く、そのZALMANから最安クラスの電源ユニットが彗星のように登場したことには、やや驚かされた。しかし単なる廉売メーカーの製品ではないだけに、手に取る際の安心感は違う。実際に「WATTTERA 1000W」の検証では、実用にまったく不安のない安定した挙動を見せてくれた。
確かにシンプルな内部構造など、コストカットの影響がないわけではない。見た目を楽しませる装飾とも無縁で、ミドルレンジ帯でも定番なセミファンレス機能すら非搭載。しかし独自の「Sense 6ピンケーブル」で電圧変動の抑制を狙うなど、電源ユニットの“中身”で勝負しようという質実剛健な心意気は好印象だ。種類別に色分けされたコネクタも親切で、自作初心者にとっても魅力的な選択肢になる。
なお「WATTTERA」シリーズは間違いなくミドルレンジ帯のユーザーをターゲットにした製品ながら、システム構成的にはハイエンドを睨んだ容量ラインナップ。折しも“真ん中”な価格帯のGPUが品薄な市場ではハイエンドクラスの製品が好調な動きを見せており、それに引きずられるように大容量電源ユニットのニーズが増している。こうした情勢下において、“安くて確かな性能”が期待できる「WATTTERA」シリーズの役割は大きい。
協力:株式会社アスク