エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.989
2021.04.22 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹
Core i9-11900Kに対して、まだ余力を残しているMSI「MPG CORELIQUID K360」。続いて第11世代Intel Coreプロセッサで新たに追加された最新ブースト機能「Adaptive Boost Technology」を有効にした状態での動作を確認していこう。CPU温度を100℃まで許容することで、すべてのコアがアクティブな状態でも5.10GHzで動作する強烈なブースト機能だが、安定動作させることができるのだろうか。
「Adaptive Boost Technology」を使用するには、強力な電源回路と冷却システムが必要。そのため「Click BIOS 5」の標準設定では無効化されている |
全コアがアクティブな状態でも5.10GHzで動作。ただしコア電圧も定格から0.2V近く上昇していた | 1コアがアクティブな状態のクロックは定格の5.30GHzから変わらず |
「OCCT 8.0.1」では定格から消費電力は約80W増加。これに伴いCPU温度はおおむね80~87℃、急激に温度が上昇するスパイク値は最高95℃に達した。ただし、「Adaptive Boost Technology」のしきい値である100℃まで上がることは一度もなく、動作クロックも5.10GHzを常に維持することができている。
続いて「CINEBENCH R23」のスコアを確認すると、消費電力は定格から実に約130Wも増加。CPU温度も「Adaptive Boost Technology」の限界温度である100℃前後で推移しており、「Adaptive Boost Technology」はIntel公式のブースト機能だが、かなりピーキーなチューニングが行われていることがわかる。とはいえ、クロックの推移を確認するとテスト中に3回5.00GHzに低下している以外は、5.10GHzで安定。MSI「MPG CORELIQUID K360」ならCore i9-11900K/KFのパフォーマンスを最大限に引き出すことができる。
「OCCT 8.0.1」実行中のサーモグラフィー | 「CINEBENCH R23」実行中のサーモグラフィー |
またストレステスト実行中のサーモグラフィーを確認すると、CPU周辺の温度は最高でも55℃前後。ヒートシンクの温度は50℃以下に抑えられており、ウォーターブロックに内蔵されたファンによって効率的に冷却できていることがわかる。
最後に「Adaptive Boost Technology」実行時のファンの回転数と騒音値をチェックしていこう。アイドル時は定格と同じく省電力機能が有効になるため、挙動は全く変わらず。一方、高負荷時の回転数は「OCCT 8.0.1」が2,100rpm前後、「CINEBENCH R23」では約2,400rpmまで上昇し、ほぼフル回転に近い状態。騒音値もそれぞれ51.2dBApと55.7dBAで、吸音材を備えた静音仕様のPCケースに入れても騒音を解消するのは難しいだろう。
コア数の増加や動作クロックの引き上げにより、軒並みTDPが100W超えているメインストリーム向けCPU。さらにブースト機能の効きも冷却性能の影響を受けることから、これまで以上にCPUクーラーの出来が重要になっている。
その点、今回検証した「MPG CORELIQUID K360」は定格であれば、静音性を損なうことなくCore i9-11900Kの熱を完全に押さえ込むことが可能。さらにCPUの性能を限界まで引き出す「Adaptive boost Technology」にも十分対応でき、メインストリーム向けCPUであれば常用レベルのオーバークロックでも冷却性能が不足することはまずないだろう。
またウォーターブロックに搭載された「TORX FAN 3.0」のおかげで、周辺パーツを冷やすことができるのも大きなメリット。PCの安定動作に加え、マザーボードやSSDの長寿命化といった効果も期待できる。
そしてもう一つの注目ポイントである2.4型の大型LCDは表示内容のカスタマイズ項目も多岐にわたり、PCケース内部のドレスアップだけでなく実用性も抜群。これら追加機能のため配線が煩雑になるのは要改善だが、気になる欠点といえばそのぐらい。MSI製品で統一したハイパフォーマンスPCを構築するなら、間違いなく外せないアイテムだ。
協力:エムエスアイコンピュータージャパン株式会社