エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.995
2021.05.09 更新
文:藤田 忠/撮影:松枝 清顕
続いては強烈な負荷がかかる電源回路の温度を確認していこう。ただし「Z590 VALKYRIE」は、統合ユーティリティ「VALKYRIE AURORA」などのハードウェアモニタで、電源回路部の温度をモニタリングできないため、VRMヒートシンクのフィンに接触型温度計を取り付けて計測を行っている。なお、トップ側VRMヒートシンクの2基の小口径ファンは回転数固定になるが、リア側2基のファンはCPU温度をソースにした回転制御が可能になっている。ここでは、ファンコントロール「A.I.FAN」で、プリセットの「アグレッシブ(Aggressive)」を選んでいる。
テストには「CINEBENC R23」の 「Minimum Test Duration:30 minutes」と、「OCCT 8.0.1」の「CPU(データセット:大、 テストモード:エクストリーム、負荷タイプ:一定)を30分間、さらにレンダリングに12分程度かかる「Blender Benchmark」の「victor」を実行している。
リア側VRMヒートシンクのフィンに温度センサーを取り付けている | ファンの回転数制御はプリセットの「アグレッシブ(Aggressive)」を選択した |
CPU周りのエアフローが最低限になるオールインワン水冷ユニットを利用しているが、VRMヒートシンクにファンを内蔵するだけあって、「Adaptive Boost Technology」有効時でもヒートシンク部の温度は40℃台を維持している。とは言え、「Adaptive Boost Technology」を有効にすることで、電源回路の負荷は増大しており、ファン回転数は11,000rpmオーバーになっていた。騒音値を、リアインターフェースのファン排気口から20cm離れた位置で計測すると、回転数が9,000rpm台になる定格時で50dBA台を記録し、「Adaptive Boost Technology」有効時は最大で54.8dBAに達している。
小口径ファン特有の高周波音もあり、ファン最大回転での運用は厳しい。ここでは、ファンコントロール機能「A.I FAN」を使って、リア側ヒートシンク側ファン2基の回転数を、騒音値が40dBA程度になる60%(7,500rpm前後)に固定。「Adaptive Boost Technology」を有効にした状態で、各種テストを実行して温度と騒音値を確認した。
ヒートシンク部の温度は、最も高負荷、高発熱な「OCCT:CPU」テストで45.7度から55.8度まで上昇したが、騒音値は想定通り40dBAを維持。「Adaptive Boost Technology」のハイパフォーマンスを不安のない温度と静音性で活用することができる。
最後に消費電力を見ていこう。「HWiNFO64 Pro」を利用して各負荷テスト実行中の「CPU Package Power [W]」を記録。テスト中の最高値を抽出してまとめている。
電源回路の負荷が強烈な「Adaptive Boost Technology」。電源回路の発熱量だけでなく、消費電力の増加も大きく、「CPU Package Power [W]」の値は定格の4.80GHz動作時から70~100Wもアップしている。
今回はBIOSTARが新たに投入したハイエンドゲーミングブランド「VALKYRIE」のATXモデル「Z590 VALKYRIE」を試してきた。Intel Z590マザーボードの中でも最高クラス22フェーズの電源回路に、システムの各部に強烈な負荷をかけるが、最新ブースト機能「Adaptive Boost Technology」を安定して使える強力な電源回路の冷却システムは、非常に魅力的だ。
ハイエンドゲーミング向けマザーボード「Z590 VALKYRIE」。CPUオーバークロックも楽しめる機能も満載している |
ネットワークは有線の2.5ギガビットLANのみでWi-Fi 6は要増設になる点や、電源回路を静かに強力に冷却するには、回転数の手動設定が必要。さらに決して安価とは言えない4万円台前半の価格など、やや気になる点がなくはない。しかしCore i9-11900K/KFと新世代ハイエンドグラフィックスカードを搭載したゲーミングPCでの長時間プレイ、4K、WQHDゲーミング、録画配信など、ヘビーな使い方をするゲーマーにとって、何より重要な信頼性の高さはピカイチ。さらに、動画エンコードやレンダリングといった高負荷、高発熱が長時間続くクリエイティブ系のPCにもオススメしたい1枚だ。
協力:BIOSTAR Microtech International
株式会社アユート