エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.999
2021.05.19 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 絵踏 一/撮影:松枝 清顕
ここからは、ゲーム系のベンチマークテストを長時間動作させ、主にゲームプレイを想定した実働チェックを進めていこう。まずはMMORPGの人気タイトル「ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ」の公式ベンチマークテストを動作させ、「HYDRO S 750W」の挙動を確かめていく。グラフィックス設定は「最高品質」、解像度は3,840×2,160ドットを選択し、30分間ループで実行した。
なおテスト中の最大消費電力は、負荷70%を割る520W。今回の検証では最も少ないパワー要求だが、実際のゲームプレイ時ではこのくらいの負荷が現実的ではないだろうか。
不規則な負荷がかかるゲーム環境を再現したテストだけに、グラフも微細な変動が常に続いている印象だ。ただしロード中の変動は12.091Vと12.038Vを繰り返すもので、これまでとまったく変わらない。最小値がやや定格割れしているのだが、それもベンチマークがリスタートする一瞬のみ。それを含めた全体の変動幅も1.3%程度しかなかった。
最後はより負荷の高いゲーム系ベンチマークとして、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION」の公式ベンチマークをチョイス。カスタム設定で最も負荷が大きくなるよう項目を選択し、3,840×2,160ドットの解像度で動作させている。テスト時間はこれまで同様に30分間だ。
なおネイティブ4Kでの動作を想定したタイトルだけに、消費電力は「FFXIV」より高い569Wまで上昇。75%程度のやや重い負荷がかかっていた。
動作の傾向は「FFXIV」とほぼ同じで、微細な変動が繰り返されているものの、ロード中は12.091Vと12.038Vが交互に続くお馴染みのパターンだ。やはりリスタートのタイミングで若干下振れするため、その一瞬のみ定格割れする点も同様。12.091Vと12.038Vの間に位置する平均値からも、下振れが極めて低頻度であることが窺える。
低価格な電源ユニットの中には、目に見える大きな電圧変動を繰り返すモデルも少なくない。決まった法則通りの動作を維持できる「HYDRO S 750W」は、その安定性がかなり高いレベルにあると言える。
長く続いた「RAIDER II」シリーズの成功を考えれば、まだ新顔と言える「Hydro S」シリーズは、それほど目立った実績を残しているわけではない。しかし電源ユニットの本分である安定性は同クラスの中でも抜きん出ており、値ごろ感のある価格設定も「RAIDER II」シリーズの立ち位置を継承する新シリーズに相応しいものだ。
もちろん現在は少数派になりつつある直結式のケーブル仕様など、やや古めかしさを感じさせる点もなくはない。目立ったギミックやオプション機能の類もなく、地味な印象を受ける向きもあるだろう。しかし独自の「MIA IC」を駆使したシンプル設計など、“削る要素”についてはすべて理由があり、実用性の面では高いレベルに落とし込まれている。
そもそも昨今のPCケースは、電源そのものを隠すシュラウドや豊かにクリアランスがとられた裏配線スペースなど、配線周りが洗練されたモデルがほとんど。直結式によるケーブル処理のデメリットも、現実的にはそれほど気にならないかもしれない。
何より低価格帯にありながら、安心して手に取れる信頼性の高さは「Hydro S」シリーズの大きな武器。今後かつての「RAIDER II」シリーズに匹敵する、エントリー向けの定番モデルに収まったとしても驚かないだろう。
協力:FSP GROUP Inc.
株式会社アユート