エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1008
2021.06.11 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 絵踏 一/撮影:松枝 清顕
「GAMDIAS認定スイッチ」の中でも、「高速入力・FPS向け」と位置付けられているシルバー軸。その押下特性は軽快そのもので、ストロークおよびアクチュエーションポイントが浅めなことから、同一キーを連打するようなシチュエーションでもストレスがない。より高速な入力が可能であり、特に新シリーズの中でもゲーミングへの適正に優れている。
メジャーブランドのスイッチと同等クラスの快適な打鍵感、充実したライティングを備えた「HERMES S1S」 |
打鍵感はほぼCHERRY MX Speedと遜色がなく、同レベルの快適さを期待しても裏切られることはないはず。低コストながらもメタルプレートが仕込まれた「HERMES S1S」は、強く押し込んだ際でも“たわみ”が発生することがなく、スイッチの良さを十分に引き出せている印象だ。やや頼りなく感じたゴム足のグリップ感も良好で、本体が軽めな割に安定している。
また、コストパフォーマンスモデルでは粗悪なスタビライザーを使っている製品も少なくないが、「HERMES S1S」にその心配はない。スタビライザーを内蔵する大きめのキーがしっかり底打ちできるため、良質なスイッチの快適な打鍵感がそのまま楽しめる。
Nキーロールオーバーによる全キー同時押しもしっかり機能している。入力抜けが起こることもなく、ゲーミング向けの適性も十分だ |
ちなみに通電時には、まずバックライトがぐるっと一周してから全体が発光するなど、オシャレな演出を用意。ライティングパターンも複数がプリセットされ、ソフト不要で切り替えられるのが簡単で良い。単にすべてのキーが発光するだけでなく、押下したキーのみ発光したり、そのキーを中心にさざ波のように光が伝播したりと、凝ったパターンも用意されている。
なお、コストパフォーマンスモデルゆえに標準装備は望むべくもないが、やはり入力時にはパームレストが必要に感じた。チルトスタンドの傾斜はごく一般的で、標準では奥側に指が届きにくい。より快適な入力を志向するなら、パームレストの導入が必須だろう。
高機能なメカニカルキーボードは1万円以上のモデルも珍しくないところ、「HERMES S1S」はそれらと同等レベルの打鍵感を格安で実現している。最大の魅力を挙げるとすれば、その一点に尽きるだろう。確かに天板以外のフレームやケーブルなど、コストカットの影響でチープさを感じる部分がなくはない。しかし良質なスイッチの実力を引き出す鉄板マウントの設計など、キーボードとしての基幹部分はしっかりと守られている。
まさに力を入れるべきところには注力し、抑えるところは抑えられたモデルといった製品。マクロ機能など高度なオプションはないものの、ゲーミングキーボードとして必要な機能は十分に網羅されており、実用性は高い。あまり予算をかけずにキーボード環境をアップグレードしたいというエントリーユーザーにとっては、最初にメカニカルキーボードに手を伸ばす際の有力候補になり得る。この良質な打鍵感を日常的に味わうことで、かけたコスト以上の満足度が得られるのではないだろうか。
協力:株式会社アイティーシー
GAMDIAS technology