エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1043
2021.08.25 更新
文:撮影・こまめ
「PCMark 10」は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストだ。各テストのスコアが目標値を上回ることで、その分野では快適に使えるとされている。ただしテスト内容の処理が軽く、特にクリエイティブワークを扱う「Digital Content Creation (コンテンツ制作)」では小規模クラスの作品作りを対象としている。なお今回は比較用に、ミドルレンジのクリエイター向けノートPC (Intel Core i7-10875H/32GBメモリ/1TB NVMe SSD/NVIDIA RTX 3060、比較機①)とミドルハイのゲーミングノートPC (Intel Core i7-11800H/16GBメモリ/1TB NVMe SSD/NVIDIA GeForce RTX 3070、比較機②)の結果を追加した。
CPU/GPUのベンチマークテストではやや低めの結果が出ていたが、実際の利用に即したテストでは悪くない結果が出ている。32GBの大容量メモリと高速なPCI-Express4.0 M.2 SSDの効果が影響しているのかもしれない。パーツ個別のベンチマークテストでは振るわなかったが、総合性能では十分な結果だ。
続いて、Digital Content Creation(コンテンツ制作)のテスト詳細について見てみよう。ワンランク上のNVIDIA GeForce RTX 3070搭載機にはかなわなかったものの、同じミドルレンジのNVIDIA GeForce RTX 3060搭載機とは同等以上のスコアだ。やはり「Creator Z16 A11U」は総合力では優秀であり、小規模な作品であれば問題なく利用できると考えていいだろう。
「UL Procyon」はアドビのクリエイター向けソフトの快適さを計測するベンチマークテストだ。こちらは重いデータや高度な処理を行なうため、ハイアマチュア/プロ向けの作品作り向きと考えられる。比較用のデータは前述の「PCMark 10」と同じくミドルレンジのクリエイター向けノートPC (Intel Core i7-10875H/32GBメモリ/1TB NVMe SSD/NVIDIA RTX 3060、比較機①)と、ミドルハイのゲーミングノートPC (Intel Core i7-11800H/16GBメモリ/1TB NVMe SSD/NVIDIA GeForce RTX 3070、比較機②)の2機種だ。
「Photo Editing Benchmark」は画像加工に関するテストを行なう。「Image Retouching」は「Adobe Photoshop」メインでメモリとGPUの性能が影響しやすく、「Batch Processing」は「Adobe Photoshop Lightroom Classic」メインでCPUとストレージの性能が影響しやすい。「Video Editing Benchmark」は「Adobe Premiere Pro」を使ったテストで、フルHD (H.264)および4K (H.265)動画の出力にかかった時間が計測される。こちらの結果は総合スコアのみだ。
「Creator Z16 A11U」では「Photo Editing Benchmark」の結果が極めて優秀だ。おそらく32GBの大容量メモリと、超高速なPCI-Express4.0 M.2 SSDの効果が強く影響しているのだろう。画像や写真を扱うのであれば、「Creator Z16 A11U」は十分検討に値すると言っていい。しかしCPUとGPUの性能が強く影響する「Video Editing」では、やや控えめな結果となった。前述のCPU / GPUベンチマークの結果が振るわなかったことが影響しているに違いない。とは言えほかの機種に比べて低いだけであって、実用レベルでは問題ないはずだ。
「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」を最高画質で10分間実行し続けた際のCPUとGPUの温度を計測したところ、平均としてはCPUが75.8℃、GPUが68.2℃だった。途中で何度かCPU温度が90℃を超えることがあったが、平均値としてはかなり抑えられている。それに従って、CPUクロックも抑え気味だ。やはり本体内部の熱対策として、パフォーマンスをあえて抑えていると考えていいだろう。
なおこの検証中は最高パフォーマンスを出せる状態にしているだけあって、排気音がかなり大きい。騒音計で計測したところ、56.5dBAとかなり大きめの結果だった。ヘッドホンを着用すればそれほど気にならないものの、環境によっては部屋の外にまで音が聞こえるかもしれない。静かな場所では、周囲への配慮が必要だろう。
「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION」を10分間実行し続けた際のCPUとGPUの温度およびCPUクロックの推移 |
「Creator Z16 A11U」の魅力はスリムな本体と、色域の広い鮮やかなディスプレイだ。特にディスプレイはプロレベルのクリエイティブワークにも活用できるクオリティを実現している。どちらかと言えばやや写真/画像加工向きだが、動画編集を含めたさまざまな用途で利用可能だ。
「Creator Z16 A11U」単体で利用するのもアリだが、プロクリエイターならより高性能なデスクトップPCを使っているケースも多いだろう。そのような場合には、モバイルワークステーション代わりに利用するのもいい。高性能ノートPCとしてはスリムかつ軽量で持ち運びやすく、その上頑丈だ。クライアントとの打ち合わせやプレゼンなどで、威力を発揮するに違いない。
協力:エムエスアイコンピュータージャパン株式会社