エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1045
2021.08.29 更新
文:撮影・藤田 忠
In Win「BR36」をオープンフレームPCケースに取り付け、その冷却性能をストレステストでみていこう。CPU負荷には、「CINEBENCH R23:Minimum Test Duration:30 minutes」と、「OCCT Pro 9.0.2:CPU(データセット 大、テストモード エクストリーム):30分間」を使用し、テスト実行中のCPUの温度と動作クロックを「HWiNFO64 Pro v7.07」を使って取得している。CPU温度は「CPU (Tctl/Tdie) [°C]」、CPU動作クロックは「Average Effective Clock [MHz]」としている。
両ストレステスト実行時のCPUの温度と動作クロックの推移をまとめると、「CINEBENCH R23」のほうが負荷が高く、テスト開始直後から80℃台に達し、そのまま80℃前半で推移している。「OCCT Pro 9.0.2:CPU」も傾向は同じだが、CPU温度は75~77℃の70℃台半ばに抑え込めている。そのためCPU動作クロックは「CINEBENCH R23」の4,400MHz台より、若干アップした4,550MHz台を維持している。
1つのダイに8コアを搭載する仕様上、Ryzen 7 5800Xは、120mm径ファンを搭載したエントリークラスの空冷CPUクーラーや、240mmサイズラジエターのオールインワン型水冷ユニットでは、Ryzen 5000シリーズの最大温度となる90~95℃に達することもある。「BR36」は、そんなRyzen 7 5800Xの発熱を抑え込み、CPU性能を最大限に引き出すことができている。
ストレステスト中のファン回転数は、「Luna AL120」(400~1,800rpm)とUMAファン(400~2,500rpm)の回転数の信号が混ざるのか、4,000~5,000rpmの異常な数値を検出しているようで、残念ながら回転数はかなりブレている。ただ、両ファンともに、ほぼ最大回転しており、騒音値は最大で57.2dBAを記録している。
最後はUMAファンの効果を確認することにした。ストレステストは温度テストと同じく、「CINEBENCH R23」と「OCCT Pro 9.0.2:CPU」を実行。電源回路の冷却ヒートシンク部に温度計を取り付け、UMAファンのPWM制御時と、強制的に止めた状態の温度を目視でチェックしている。さらにM.2スロットへの影響もみるため、「CrystalDiskMark:64GiB:9回」を3回連続実行。温度を「HWiNFO64 Pro v7.07」の「Drive Temperature」で確認している。
100mm径と大型なUMAファンは、最大風量26.93CFMと、十分な風量を生み出すため、電源回路のヒートシンク温度はストレステスト中でも、停止時より6~7℃ダウンした30℃台を維持している。M.2 SSDもピークリード7GB/sec、ライト5GB/secに達する性能を発揮するPCI-Express4.0(x4)接続のNVMe M.2 SSDとなるWestern Digital「WD_Black SN850 NVMe」の熱を抑え込み、最大でも54℃と、停止時と比べて19℃も低くなっている。UMAファンを停止しても、マザーボード標準のM.2ヒートシンクを装備しているので、サーマルスロットリングが発生する不安はないが、最速クラスのPCI-Express4.0(x4)接続NVMe M.2 SSDの高負荷時に50℃台を維持できるのは高く評価できる。
高発熱なRyzen 7 5800Xを80℃台に抑え込み、オールコア4.5GHzオーバーとなるCPUの最大性能を引き出す360mmサイズラジエターの高い冷却性能に加え、水冷システムのデメリットを打ち消すUMAファンを搭載した「BR36」は、なかなか魅力的。特にM.2 SSDの冷却効果は高く、高速化とともに発熱も増加したPCI-Express4.0(x4)接続のNVMe M.2 SSDが主流になりつつある現状では、CPUの冷却性能とともに評価できるポイントだ。
CPUとともに、高負荷、高発熱になっている電源回路や、PCIe4.0 NVMe M.2 SSDなどをしっかりと冷却するIn Win「BR36」 |
50dBAを超えた駆動音は気になるが、これは組み合わせるCPUや、ファン制御の設定次第と言える。今回はテストに使ったCPUが、240mmサイズラジエターのオールインワン型水冷ユニットでも、90℃に達するRyzen 7 5800Xだったが、ストレステスト時でも70℃に収まるRyzen 9 5900Xなどなら、PWM制御のポン付け状態でも、静粛性を維持しながら冷却できるはずだ。
協力:In Win Development
株式会社アユート