エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1049
2021.09.06 更新
文:撮影・松枝 清顕(解説)/ 検証セッション・池西 樹
次に非接触型デジタル温度計によるヒートシンクのポイント別温度と、サーモグラフィの結果を確認していこう。CPUはCore i9-11900Kを使い、「Adaptive Boost」は有効。ストレステストは「CINEBENCH R23:Minimum Test Duration:30 minutes」を使用している。
高負荷時のポイント別温度計測結果 |
まずポイント別温度を確認すると、最も高いのは受熱ベース部分で、CPUから離れるに従って温度は低くなる。またメモリスロット側のヒートシンクとリアインターフェイス側を比較すると、フレッシュなエアが吹き付けるメモリスロット側の温度のほうが、暖気が吹き付けるリアインターフェイス側より低くなった。
アイドル時のサーモグラフィ結果 | 高負荷時時のサーモグラフィ結果 |
そしてサーモグラフィでは、ヒートシンクに比べてヒートパイプ部分の方が明らかに赤く、温度が高いことがわかる。さらにヒートパイプ自体も受熱ベースに近くなるほど温度が上昇しており、CPUから発生した熱がヒートパイプを経由してヒートシンクに移動している様子が確認できる。
「MasterAir MA624 Stealth」では、メモリや周辺パーツとのクリアランスによって、側面ファンを140mm、120mm、ファンなし(中央ファンのみ)の3種類から選択することができる。そこでテストセッションのラストは、側面ファンの構成によってどのように冷却性能が変化するのかを確認していこう。なおCPUはCore i9-11900Kで、ストレステストには「OCCT 9.0.5:CPU:データセット大」を使用している。
140mmファン(67CFM/2.25mmH2O)と120mmファン(62CFM/2.5mmH2O)を比較すると、風量は140mmファンが、静圧は120mmファンの方が優れている。しかしテスト結果を確認するとCPU温度に大きな差はつかなかった。どちらのファンを選択した場合でも冷却性能に大きな違いはないだろう。
隣接するメモリスロットとの兼ね合いから、120mmファン(スクエア)に換装が可能。径20mmの違いは思いのほか数値には表れなかった |
一方、側面ファンを取り外すと平均で温度は約5℃上昇。CPUが許容する最高温度100℃に達することもあり、Core i9-11900Kを使用する場合はデュアルファン構成を強くオススメする。
冒頭でも触れた通り、近頃では空冷CPUクーラーの秀作に触れる機会が増えている。有り難いことに、いずれもハズレがなく、ハイエンド志向のCPUをしっかりと冷却してくれる。オールインワン型水冷ユニットにはたくさんの良さがあるが、遙かに歴史の長い空冷クーラーにも、空冷ならではの進化や工夫・改良により、高いパフォーマンスが維持できている。これからも上手に折り合いを付けながら共存していくことだろう。われわれユーザーとしては、多くの選択肢がある事は大歓迎だ。
さて「MasterAir MA624 Stealth」は、冷却機器からスタートしたCooler Masterのアッパークラスとあって、冷却能力に注文を付けるような要素は見当たらなかった。回転数や風量の違い等はあるにせよ、140mmファンと120mmファンで性能差があまり出ないという結果に苦笑いという読者もいるだろう。しかしこれは、ヒートシンクの放熱能力の高さに注目すべきで、それだけCPUからの熱を6本のヒートパイプで放熱フィンへまんべんなく拡散させ、急速に冷却しなくてもCPU温度は急上昇しない余力を感じさせた。ツインタワー型による広い放熱面積は、非常に効果的であることの裏付けともいえよう。
小・中型空冷クーラーのピーキーな性質とは異なり、大型なりに余裕のある冷却性能。Cooler Masterから久し振りに正統派の空冷が完成した。
協力:Cooler Master Technology