エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1051
2021.09.10 更新
文:編集部 絵踏 一/撮影:松枝 清顕
パフォーマンス面の検証も一段落、本項では「MAVERIK」が備える冷却機構の実力を確かめておきたい。オーバークロック済みCPUを搭載する「MAVERIK」は、CPUクーラーに360mmラジエターのオールインワン型水冷ユニット「MPG CORELIQUID K360 SP」を採用。グラフィックスカードには、デュアルファン装備のオリジナルクーラーを備えている。それぞれフルロードの負荷がかかる中で、どのような挙動を示してくれるだろうか。
なお、CPUクーラーの検証には「CINEBENCH R23:Minimum Test Duration:10 minutes」、GPUクーラーの方は「3DMark Time Spy Extreme Stress Test」をそれぞれ実行。テスト中の温度とファン回転数を「HWiNFO」を使用して記録した。
さすが全コア4.8GHzにオーバークロックされているだけはあり、ラジエターに備え付けられたファンも2,700rpm前後で回転。ゲーミングPCとしては標準的ながら、フルロード中はそれなりの動作音を鳴らしている。
しかし最大許容温度100℃の「Core i7-11700K」を80℃未満に留めていることからも、クーラーの優秀な冷却性能は明らか。オーバークロックにより増加した発熱をしっかり抑え込めている。
続いてGPUクーラーの方はどうだろう。テスト中のグラフ推移を見ると、GPU温度は70℃未満、ホットスポット温度は80℃未満に留まるようファン回転数が調整されていることが分かる。それでもファンの稼働率は50~60%程度であり、「TORX FAN 3.0」を採用するデュアルファンクーラーは余裕たっぷりだ。冷却が追いつかなくなる心配は無用だろう。
ここまで続いた各種検証の締めくくりに、「MAVERIK」の消費電力をチェックしておこう。ストレステストとして「3DMark Time Spy Extreme Stress Test」を動作させ、実行中の最大値を高負荷時、起動後10分間何もせず放置した状態をアイドル時として、ワットチェッカーを使用した計測を行った。
アイドル時が76Wとやや高止まりしているのは気になるが、これはCPUオーバークロックによる影響かもしれない。その一方で高負荷時は251Wに留まっており、より重量級なタスクや複数プログラムの同時起動であっても、400Wを大きく超えることはなさそうだ。850W電源を搭載している「MAVERIK」にとっては、まったく問題ない消費電力と言える。
MSIは「MAVERIK」のメリットとして、「システム構築の手間を大幅に削減できる」点を挙げている。本来ゲーミングPCを組み上げようと思えば、それなりの基準をクリアするパーツチョイスが必須。雰囲気あるマシンに仕上げるなら、ライティング技術の対応に気を配りつつパーツを集め、イルミネーション設定を施す手間も加わるだろう。
いわばそういった“面倒”を楽しむのも自作PCの醍醐味ながら、それらが手頃にまとめて手に入る「MAVERIK」は、特にライト層のユーザーにとっては魅力的な存在だ。それでいて構成パーツはどれも一級品がMSIによってコーディネートされ、しかもCPUにはチューニングまで施されるという、ハイエンド寄りな仕上がり。「MAVERIK」だけの特別なデザインもまた、自慢したくなる要素だ。
そして国内版の「MAVERIK」は、特にライト層に優しい。グローバル版には搭載されないグラフィックスカードと電源ユニットがあらかじめ組み込まれ、ストレージとOSを追加するだけでマシンが完成。GeForce RTX 3060を搭載したシステムは、トレンドのeスポーツ系タイトルから重量級のゲームまで、フルHDベースで快適にプレイできるパフォーマンスを備えている。
さらにシステムの組み立てを手練れの国内工場が手がけるという、ビルド・イン・ジャパンの安心感も見逃せない。件の工場はMSIが驚くほど品質基準が厳しいらしく、製品のクオリティは世界中の「MAVERIK」の中でも日本向けモデルがピカイチだろう。
8月半ばより販売が始まっている「MAVERIK」。一部店舗では実機の展示も行われている(画像はツクモパソコン本店) |
その一方で、構成の自由度がまったくない点は多少気になった。チューニング済みCPUや最高レベルの冷却機構などハイエンド級の装備がありながら、グラフィックスカードはミドルクラス止まり。よりハイパフォーマンス志向なユーザー向けに、(例えば公認サポート店限定でカスタムできるなど)上位GPUなどのカスタマイズ要素があってもいいように思う。今回検証で使用しているが、先ごろ投入された自社製SSDを構成パーツに加えない手もないだろう。
全身を自社製パーツでフルコーディネートできる限られたメーカーとして、その象徴のような存在と言える「MAVERIK」。優れた実用性とともに、多くの可能性を感じさせてくれるプロダクトだった。
協力:エムエスアイコンピュータージャパン株式会社