エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1052
2021.09.12 更新
文:撮影・編集部 松枝 清顕
グラフィックスカードは通常の水平マウントに加え、オプションパーツを購入すれば、魅せる垂直マウントにも対応。今回は両スタイルで搭載テストを試みた。
グラフィックスカードにはGIGABYTE「AORUS GeForce RTX 3080 MASTER 10G」を用意。3連ファンを搭載し、カード長は319mm、厚さは2スロット超えの70mmとなるハイエンドグラフィックスカードだ。「Torrent」のグラフィックスカード有効スペースは長さ461mmまで。ただし評価サンプルのフロント面にはすでに、オールインワン型水冷ユニット「Lumen S36 RGB」のラジエターが約75mm(Torrent Fan Brackets+ラジエター)内部を占有している。
搭載方法はいたってシンプル。背面から拡張スロット金具2本を外し、グラフィックスカードをハンドスクリューで固定。補助電源コネクタに電源ケーブルを挿せば作業は完了する。なおラジエターまでの距離は約75mm。カード長300mm超えのハイエンドグラフィックスカードと、ラジエターは十分に距離を保ちながら共存できる事が分かった。
なお「Torrent」には、重量級グラフィックスカードを支える「GPU Support Bracket」が標準で装備されている。マザーボードトレイ右手の固定用穴を使い、高さを調節しながら金属プレートが下支えする仕組み。組み込み後は狭い場所での作業になるため、グラフィックスカード固定前に仮止めしておく事をお勧めする。
付属品の「GPU Support Bracket」は、グラフィックスカードの末端を下支えする文字通りサポートブラケット。しっかりネジ留めできるため、重量級グラフィックスカードが垂れ下がるという事はない。見た目のみならず、バスインターフェースへの負担も軽減できるはず |
ここで1点付け加えると、グラフィックスカードの固定作業自体には何ら問題がない。ただし、補助電源ケーブルの長さが多少気になる。今回の検証ではFractal Design「Ion+ 2 Platinum 860W」(型番:FD-P-IA2P-860)を使用。補助電源ケーブル(PCI-Express 6+2pinケーブル)の全長は670mm(550+120mm)だが、VGAクーラー(冷却ファン側)がある下方向から背面のスルーホールを経由すると、トップマウントの電源ユニット本体まで長さが足りない。やむなくバックプレート側からスルーホールを経由させたところ、ギリギリで電源ユニットの背面コネクタまで届くといった具合だ。
機能的に問題ではないものの、スリーブケーブルを用意してドレスアップしながらケーブルを延長するなど、こだわりの自作派なら多少の工夫は必要になってくるかもしれない。
次に「Flex B-20 Vertical Riser」を使い、グラフィックスカードの垂直マウントを試してみよう。「Define 7」「Meshify 2」が採用する、ブリッジレス拡張スロットで使用ができる人気のオプションパーツで、2020年10月16日より販売が開始されている。
「Flex B-20」(型番:FD-A-FLX1-001) (2020年10月16日発売) 外形寸法/134x145x182mm/重量248g |
これぞ”魅せるためのパーツ”で、強化ガラス製サイドパネル仕様の「Torrent Black Solid」(FD-C-TOR1A-05)以外をチョイスするなら新規組み込み時より準備しておきたいアイテムだろう。ライザーケーブル付きでそこそこ値は張るものの、劇的に見た目が変わる事は説明するまでもない。
通気性を重視した従来品「Meshify」よりも格段にエアフローが強力になった「Torrent」。そのコンセプトは、Fractal Designファンが抱くイメージとは多少離れ、これまで以上に市場からの反応が気になる新製品だろう。
実際に資料に目を通している段階と、実機を目の前にしたときの印象の差は大きく、Fractalとしてはやや異質な筐体である事は違いない。とは言え、象徴であるフロントパネルのY字型ベントが特徴的なオープンフロントグリル・デザインはFractalのそれだし、トップ両端の角を落とす事で、風任せの強力なエアフロー重視モデルの印象を和らげている。バリエーションの多さは若干物言いをつけたい所だが、それもFractalの持ち味だろう。
検証を終えたところで、あらためて「Torrent」に思いを巡らせてみると、やはり製品の軸となっているのは出荷時よりフロントにマウントされた、180mmファン2基の存在だろう。何はさておき、180mmファンをフロントに搭載させる事から、設計がスタートしたようにも思えるほど、「Torrent」にとっても重要な存在なのだ。
スカンジナビアデザインと称される全体像から、1基あたり最大153.7CFMもの大風量を筐体内部に送り込む。実際にはPWM制御が効いて緩やかに回転する時間がほとんどだろうが、敢えて最大風量に設定したところ優雅な佇まいは一変。勇ましいばかりの大風量は、外気を”送り込む”から”叩き込む”というイメージになる。それほどのエアフローを常時必要とするケースは稀だが、それだけのポテンシャルを秘めているという事は、頭の隅に残しておこう。いつか必要になるかもしれない。
静音PCケースからスタートしたFractalは、こんな製品も作れるという幅の広さを見せた。製品サイトはあくまでスマートだが、全開時の「Torrent」はそのイメージとはまるで違う。
協力:Fractal Design
株式会社アスク