エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1052
2021.09.12 更新
文:撮影・編集部 松枝 清顕
次は水冷ユニットの搭載を試みる。全高188mmをサポートするCPUクーラー有効スペースだけに、ハイエンド志向のサイドフロー型CPUクーラー(空冷)を選択する人もいるだろう。一方で高い冷却能力に加え、CPUソケット周辺をスマートに魅せたいならオールインワン型水冷ユニットが最良のチョイスかもしれない。
搭載テストには2021年9月より販売が開始されたFractal Design「Lumen S36 RGB」(型番:FD-W-L1-S3602)を用意。120mmファン3基を360mmサイズラジエターに搭載する、最新のオールインワン型水冷ユニットだ。
まず最初に考えるのは、ラジエターの設置場所だ。「Torrent」は、フロントおよびボトムに360mmサイズラジエターが搭載できる。特にフロント180mmファン2基を標準で備える点が「Torrent」のセールスポイントだが、オールインワン型水冷ユニット備え付けの水冷チューブ長や取り回しを考えると、フロント部に設置する事になるだろう。
せっかくの装備品だけに多少気が引けるものの、2基の180mmファンを取り外し、付属のTorrent Fan Bracketsを使って120mmファン3基とラジエターをフロント部にマウント。若干のトラブルに遭遇しながらも組み込みを終えた。「Lumen S36 RGB」については別途詳細レビューをお届けするとして思惑通り、水冷チューブの取り回しも問題なく、スマートに搭載できている。ラジエターにポンプを内蔵するタイプだけに、ウォーターブロックも極力小型化され、見た目にもスッキリだ。
実はこのスタイルにするにあたり、取り外した180mmファン2基をボトム部に移植。ボトム部から外した140mmファンをリアで有効活用すべく、1基の増設作業を行った。こう記せばたやすいが、実際に手順を間違えると厄介な事になる。次にその顛末をご紹介しなければならない。
フロントに360mmサイズラジエターを搭載するにあたり、以下の作業を行った。
「Torrent」に標準で装備される冷却ファン全て。単品で集めればそこそこインパクトのある出費になるはず。製品の完成度をプラスすれば、市場想定売価は適正だろう |
それぞれのファンの固定についてはネジを流用すればいいので、特に問題はない。しかしトラブルが発生したのは、その搭載手順だ。
フロント部にラジエターを搭載すべく、付属のTorrent Fan Bracketsに120mmファン→ブラケット→ラジエターの順で固定。これをフロントパネルに4箇所ネジ留めを行った。ウォーターブロックも搭載し配線が全て終了。起動テストを済ませ、仕上げとばかりに180mmファン2基を固定した着脱式ファンブラケットを元の位置に戻そうとしたところ、フロントのTorrent Fan Brackets末端にぶつかり、搭載ができなくなってしまった。
おおよその位置に180mmファン2基を固定した着脱式ファンブラケット。だがすっかり作業が済んだTorrent Fan Brackets+ラジエター+120mmファンの下部に干渉。どうやっても隙間が足りない |
さらに分かったのは、38mm厚180mmファンを着脱式ファンブラケットに固定すると、マザーボードの末端ギリギリまで隙間なく接近。180mmファンのケーブルはブラケットをボトム面にネジ留めする前に、小さなスルーホールから背面に通しておく必要があるのだ。
今回は前面のTorrent Fan Bracketsを一旦取り外し、ボトム面の着脱式ファンブラケットが入る空間を作り、さらに180mmファンのケーブルを背面に通してから組み直しを行った。180mmファンケーブルの処理はこの際ユーザーの作業範囲内としても、ボトムの着脱式ファンブラケットは物理的な問題だけに、手順を予め知っておく必要がある。もしスライド式ならこうはならず、是非改善して欲しいところだ。
38mm厚180mmファンの搭載位置も仮組み段階でチェックしておく事をお勧めする。完璧な製品を目指すなら、要改善ポイントと言えよう |
「Torrent」はフルタワーPCケースだけあって、一般的なミドルタワーPCケースに比べ、格段に内部容積が広い。となればDIY水冷(本格水冷)構築用のベース筐体として選択肢に入ってくる事は必然だろう。
Fractalでは予めニーズを想定し、マザーボードトレイ右側のエリアに、リザーバーの設置用スリットを8本用意。ユーザーマニュアルの31ページ目には、詳細に寸法が開示されている。さらにプラスチック製トップカバー(パネル)を外すと、前方シャーシ側のフレーム部分には吸水口(Water Cooling Fillport)が3つ装備されていた。
なおPDFマニュアルは製品サイトから誰でも入手可能で、事前に構成パーツを想定しておく事もできる。