エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1058
2021.09.28 更新
文:撮影・編集部 松枝 清顕
次にCPUクーラーを搭載してみる。今回は空冷ではなくオールインワン型水冷ユニットAntec「Neptune 240 ARGB」を用意した。「Neptune ARGB」シリーズの240mmサイズラジエターモデルは、今年1月より国内市場で販売が開始されている。「P82 Silent」は左側面が密閉型ソリッドパネルだけに、冷却ファンとポンプヘッドに搭載されたアドレサブルRGB LED機能は発揮できないものの、冷却性能を買ってのチョイスだ。
「Neptune 240 ARGB」のチューブ長は348mm。240mmサイズラジエターが搭載できるフロントパネルまでは十分で、ストレスなく収める事ができている。マザーボードに続き、搭載に関する問題や、作業のしにくさは感じなかった。
テンポ良く作業が進み、次にグラフィックスカードを搭載してみた。拡張カードの有効スペースは最大380mmまで。とは言え、フロントパネル裏には既にラジエター(27mm厚)と冷却ファン(25mm厚)が占有しているため、計算上では残り328mmがグラフィックスカードに与えられたスペースとなる。
このような環境で、搭載テストには2スロット超えの70mm厚となるGIGABYTE「AORUS GeForce RTX 3080 MASTER 10G」をチョイス。カード長は319mmだけに、搭載後は残り9mmのタイトな状況。うまく組み込めるだろうか。
「P82 Silent」の拡張カード固定は、筐体外部からネジ留めを行う。少しでも拡張カード有効スペースを稼ごうという設計だが、今回の構成ではこれが功を奏し、どうにか組み込む事ができた。結果的に搭載後のクリアランス(グラフィックスカード末端からラジエターまで)は約15mm程度を残しているが、長尺基板を限られた空間に滑り込ませる作業は、あちこちをぶつけそうになる。
有効スペースとは、グラフィックスカードの長さが範囲内であっても、実際に搭載する作業スペースは考慮されていない(電源ユニットはマージンがとられているケースが多い)。固定方法にも影響するが、構成パーツをチョイスする際には、ある程度の余裕はみておく必要がある。
慎重に作業することで今回は収める事ができた。ラジエターを取り外し、作業手順を変える事でもう少し楽に搭載できる余地はあるだろう |
未だ筆者の認識は「静音」のままアップデートされずにいる。今年創立35周年を迎えるAntecは、2005年デビューの静音PCケース「P180」の大ヒットで一躍メジャーブランドになった。あれから約16年、常に自作PC業界の上位に居続けることは並大抵のことではない。その間、多くのメーカーが消えていった事を思えば、なおさらだろう。アメリカ・カリフォルニア州発祥のAntecは、日本国内市場にもマッチした製品も数多くリリースし、われわれ自作派を楽しませてくれている。今後も歴史は続いていくはずだ。
今回取り上げた「P82 Silent」は、Performaシリーズの中でも普及価格帯に位置するミドルタワーPCケースだ。想定売価もさることながら、「P101 Silent」ほどガチガチな静音対策は施されておらず、防音シートも両サイドパネルに貼り付けるだけに留められた。ベース筐体が高エアフロー志向の「P82 Flow V2」である事を思えば合点がいくし、”マイルド静音”PCケースの仕上がりでも納得だろう。
設計自体はAntecのそれで、工作精度も価格によりバラツキがあるワケではない。構成パーツの組み込み易さもプラス材料だ。今回はバリエーションモデルという立ち位置だが、ベースがしっかりしているだけに、新たな展開ができる好例といったところだろう。Antecはこの手の仕事が実に手慣れている。
協力:Antec
株式会社リンクスインターナショナル